神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

このサクメとかいう奴…。

金色の魔導師証明書を持ってるってことは、それだけ優秀な魔導師なんだろう。

一体どんな魔法をどんな風に使うのか…。

とにかく、警戒対象であることに変わりはない。

しかし、シディ・サクメは相変わらず、人の良さそうな笑みを浮かべ。

「ようこそキルディリア魔王国へ、どうぞ、お入りください。シルナ・エインリー様。羽久・グラスフィア様」

と言って、クリスタル宮殿に…。

…いや、偽クリスタル宮殿に招待してきた。

「女王陛下が、首を長くしてお待ちです」

「…」

「大丈夫。そう警戒せずとも。あなた方は我が国の大事な賓客です。決して手荒な真似は致しません」

…どうだか。

アーリヤット皇国に突然殴りかかった連中が、「手荒な真似はしません」なんて言ったって。

信じられる訳ないだろ。

それに…。

「…君、いつから私達のことを見てたの?」

シルナは珍しく真剣な表情で、シディ・サクメに尋ねた。

「はい?」

「とぼけないで…。…見てたんだよね?尾(つ)けてたんだよね?でなきゃ、このタイミングで突然現れるなんて出来ないよね」

…!…やっぱり。

俺達が今日、この時間に、この場所に来ることは、彼らに知られていた。

一体いつから…。…何処から。

「我が国の大事なお客様に、万が一にも危険があっては困りますから」

しかし、シディ・サクメはにっこりと笑って、そう答えるだけで。

いつ、何処から尾けていたのかについては、何も言わなかった。

…こいつ…。

もしかして、今朝俺達がファニレス行きの列車に乗った時から…。

いや…もしかして、昨日の時点で…。

ホテルに泊まった時や、船に乗ってこの国にやって来たその時から、俺達の存在に気づいて…。

…有り得る。

あまりの不気味さに、寒気がした。

「立ち話もなんですから、さぁ、中にどうぞ」

と、シディ・サクメが促した。

「大丈夫ですよ。あなた方の安全は保証します」

…お前に保証されたところで、まったく安心出来ないんだけどな。

代わりに俺は、唯一この国で信頼出来る人物…傍らにいるシルナ…の顔を見つめた。

「シルナ…」

…どうする?

もしも引き返すなら、これが最後のチャンスだぞ。

このインチキクリスタル宮殿に、一歩でも足を踏み入れてしまえば…俺達は、どうなるか分からない。

「…大丈夫、羽久。行こう」

シルナはそう答えた。

…そうだよな。

キルディリア魔王国行きの船に乗った時点で…とっくに、俺達に引き返す道なんて残されていないのだ。

ならば、何が待ち受けていたとしても…前に進むしかなかった。