神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

俺達は、ようやくキルディリア魔王国王都ファニレスにある、王宮、ファニレス王宮に辿り着いた。

…ここまで長かった。

王宮を探す必要はなかった。

王都に辿り着いて、列車を降りるなり。

そこから既に、大きな宮殿の姿が見えていたからである。

市内のどの建物よりも大きくて、そして、圧巻だった。

「…何だ、この宮殿…」

俺は宮殿と聞いて、ルーデュニア聖王国の王宮や、アーリヤット皇国の皇宮を想像していたが。

でも、これは違う。

城だ。透明なお城。

王都のど真ん中に鎮座する、荘厳で美しい、水晶のお城。

そのお城を取り囲むように、水晶のガーデンゲートがそびえ立っている。

まるでこの場所だけ、お伽噺の世界から切り取ってきたかのようだ。

「クリスタル宮殿だなんて…。…悪趣味にも程があるぞ」

こんなところ、本当に人が住んでいるのか?

シンデレラだって、もっと趣味の良い宮殿に住んでると思うぞ。

「シルナ…元々この宮殿って、こんな透明な城だったのか?」

「いや、そんなはず…。…」

「…シルナ?」

どうして黙る?何か気になったことでも?

「…羽久。これ、よく見て」

「え?」

「この王宮。よく見てみて」

「…」

このクリスタル宮殿を?

俺は、じっと宮殿の壁や、取り囲むガーデンゲートを見つめた。

そして、シルナの言わんとすることを理解した。

「…これ…。…幻、じゃないか」

「うん」

一見、水晶のお城のように見えたけど。

お城全体が、不思議な魔力を纏っていることに気づいた。

お伽噺のお城は、見かけだけ。

お城の周囲全体に幻覚魔法をかけて、水晶のお城のように見せているだけで。

実際の建物は、まったく違う造形なのだ。

…まさか、そんなからくりが。

「幻覚魔法なんて…。どうして、そんなことを…」




「お見事です。この仕掛けにすぐ気づくとは」



「っ!?」

突然、背後から声がして。

驚いて振り向くと、そこには若い青年が立っていた。

「…あんた…」

…誰だ、と聞こうとして。

俺は、その青年が首から提げているものに気づいた。

金色だ。

ゴールドカード持ちの魔導師。

本当に…実在したのか。

俺がその証明書を凝視していることに気づいたのか、彼はにこっ、と微笑んだ。

「始めまして。自分はキルディリア女王に仕える、シディ・サクメと申します」

「…」

「驚いているようですね」

…そりゃそうだろ。

いきなり、金カード持ちが出てきたんだから。