神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

王都ファニレスに到着後。

俺達は公共交通機関を使って、ファニレスのど真ん中に位置する王宮に向かった。

どの乗り物に乗っても、魔導師証明書の提示を求められた。

青カードでは乗れない乗り物や、または青カードのみ乗車料金が違うというのは当たり前。

入り口に、「青カードお断り」というステッカーをでかでかと貼り付けているお店もたくさんあった。

まるで、「ペットお断り」みたいな扱いじゃないか。

人間はペットじゃないんだって、この国の人間は誰もしらないのか。

それどころか、歩道でさえ、魔導師が優先らしく。

銀色のカードを首から提げた人々は、堂々と道の真ん中を歩いているけれど。

その影で、こそこそと、隠れるようにしながら歩いている挙動不審な人が散るな、と思ったら。

その人が提げているのは、青いカードだった。

…そんな、青カード持ちであることを恥ずかしがるみたいに…。

それに、すべての国民がちゃんと証明書を持ち歩いていることに驚いた。

小さな子供からお年寄りまで、お守りみたいに、首から証明書を提げている。

幼稚園児くらいの子供でさえ、魔導適性があることを示す銀色のカードを、自慢げに首に提げているのだから。

このちっぽけな証明書が、この国でいかに威力を発揮するか、嫌と言うほど思い知らされた。

そして同時に、気づいたことがある。

「…なぁ、シルナ」

「何?」

「この国に来てから、ゴールドカードの国民を見たことあるか?」

「…そういえば…。…ないね」

だよな。

俺も、最初からそこまで注意深く見ていた訳じゃないから、もしかしたら見逃しているだけなのかも知れないが。

この国に来てからというもの、俺は一度も金色の証明書を持っている人を見たことがない。

大抵銀色か、あるいは…青。このどちらか。

港町には、俺達と同じ、キルディリア旅行にやって来たオレンジ色のカードを持っている人も見かけたけど。

今がアーリヤット皇国との戦争中だからか、オレンジカードもそれほど多くはなかった。

でも、金色のカードは見たことがなかった。

1等車の中を覗けばいたのだろうか?

「特別優秀だとみなされた上級魔導師…って言ってたよね。金色の証明書…」

「あぁ…。…その『特別優秀』が、どれくらい優秀なのかは分からないけど…」

どのレベルを指して言ってるんだろうな。

例えば俺とシルナがこの国に住んでいたとしたら、何色の証明書になるんだろう。

俺は銀だろうな…。…でも、シルナは金色をもらえるんじゃないか?

あとはシュニィとか…。ジュリスとかも、金色の証明書をもらえるんじゃないだろうか。

…もらえたとしても、要らないけど。

キルディリア魔王国は、国民の大半が魔導師だから。

そんなキルディリア政府が「特別優秀」と判断するくらいなのだから、きっと非常にレベルの高い魔導師なんだろう。

金色のカードをひけらかして、たった1両しかない1等車でふんぞり返っているのが、どういう連中なのか。

きっとさぞかし「素晴らしい」魔法を使えるに違いない。

是非とも見せてもらいたいものだが、その偉そうな顔を想像すると、嫌気が差したので。

やっぱり見たくない。




…そう、思っていたのに。