神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

俺達はその後、ホームにやって来たファニレス行きの列車に乗り込んだ。

列車は10両編成で、一番前の1両のみが1等車、後ろの2両が3等車。

残る真ん中の7両は、全部2等車だった。

これを見る限り、ゴールドカード…上級魔導師とみなされる国民は、随分と少ないらしい。

俺達は当然、許可された2等車に乗り込んだ。

2等車ではあるけれど、座席はそれなりに広くて綺麗だし、座り心地も良かった。

ここでもドリンクの無料サービスがあるようで、列車が走り出すと、飲み物とちょっとしたおやつが配られた。

嬉しいサービスなのかもしれないけど、朝から紅茶やコーヒーを既に飲んでいるので、もう水分は欲しくない。

それに何より、列車に乗っている間中、3等車のことが気になって仕方なかった。

2等車はとても快適だけど、この国の性質上、3等車はもしかして…。

どうしても気になった俺は、こっそり、乗るべき車両を間違えたフリをして、3等車の様子を覗きに行った。

そして、それを見たことを後悔した。

「…」

俺はがっくりと肩を落としながら、自分の席に戻ってきた。

「羽久…。…どうだった?」

「…酷いもんだったよ」

座席に残ってきたシルナに、俺は自分の見てきた光景を話した。

3等車には、青いカードを首にぶら下げた人々が、ほとんどすし詰め状態でだった。

2等車はまだまだ座席に余裕があるのに、3等車には座る場所さえない。

赤ん坊を抱いた女性が、天井に吊り下がった吊り革を手に、辛そうに踏ん張って立っていた。

思わず、2等車に来てください、って言いそうになった。

せめて3等車の車両、もっと増やしてあげれば良いのに。

王都まであの状態なんて、酷過ぎる。

この惨状を訴えると、シルナも沈鬱な表情だった。

「そっか…。…それなら、きっと1等車は、ここよりももっと豪華なんだろうね」

「あぁ…だろうな」

3等車と2等車で、ここまで大きな差があるのだ。

1等車はきっと…。…玉座でも置いてあるんじゃねぇの?

マジで。誇張じゃなくて。それくらいやっててもおかしくない。

…見てみようとは思わないけどな。

「…はぁ…」

俺は座席に身を預け、深々と溜め息をついた。

「…羽久。大丈夫?少し休んだ方が良いよ」

シルナは、心配そうに俺を見つめていた。

「この国に来てから、ほとんど寝てないでしょ」

「…それはシルナもだろ」

寝てないのはお互い様だ。

…疲れてるのも。

「羽久は、この国に来たのは初めてだから…」

そういや、シルナは昔、一回来たことがあるんだっけ…。

「…シルナ。この国は前からこうなのか?ずっと昔から…?」

「…ううん。少なくとも、私が以前来た時は…。…確かに非魔導師のことを見下してはいたけれど…。ここまで露骨な差別はしてなかった」

「…」

そうだったのか。

だよな。シルナだって、魔導師証明書の発行、なんて制度があることを知らなかった。

シルナが以前この国に来た時はまだ、こんなクソったれみたいな制度はなかったのだ。

「ここまで酷くなってるなんて…思わなかったよ」

「…そうか…」

「…生きづらいだろうね。この国は。…非魔導師の人々も、それに…魔導師の人々も」

「…同感だよ」

俺は魔導師だけど。この国では優遇される立場だけど。

それでも俺は、こんな息苦しい国で暮らしたいとは思わなかった。