神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

…あれかな。もしかして、テーブルで食べるのと、テイクアウトして外で食べるのとじゃ、メニューの値段が違うんだろうか。

テイクアウトなら100円オフ!みたいな。

などと考えていると、店員さんが聞いてきた。

「オレンジカードのお客様ですね?」

「え?あ、はい…」

今日も俺達は、昨日もらった、あのふざけたオレンジ色の証明書をネームホルダーに入れて、首から提げていた。

「でしたら、中にどうぞ。お好きな席に」

「え…。…え?でも、外、立って食べてる人がたくさん…」

と、シルナが言いかけたのだが。

「2名様、オレンジカードのお客様が入りますー!」

店員さんは、厨房に向かってそう言っていた。

いや、そんな。ラーメン2丁入ります!じゃないんだから。

「…外で食べるんじゃないのか?」

「…分かんない…。…空いてるなら、座っても良いのかな?」

「…多分…」

俺とシルナは、小声でボソボソと喋っていた。

誰か解説してくれ。どういうことなんだ俺は。

戸惑いながらも、俺達は空いている席に向かい合って座った。

…良いんだよな?ここ、座っちゃって…。

すると、さっき俺達を迎えてくれた店員さんが、メニューを持ってきた。

「どうぞ。ご注文が決まりましたらお呼びください」

「あ…。…どうも…」

「こちら、サービスのモーニングティーになります。おかわり自由ですので、なくなったら呼んでくださいね」

と言って、淹れ立ての紅茶のティーカップを、俺達の前に置いた。

え、マジ?

こんな美味しそうな紅茶が、サービス?しかもおかわり自由?

お金出して頼むものじゃないの?これって。

俺達がびっくりしていると、別の席に座っていた男性が、軽く手を挙げた。

どうやら、その紅茶のおかわりを要求しているようだ。

店員さんは小走りに向かって、空っぽになった男性のティーカップに、新たな熱々の紅茶を注いでいた。

男性は当たり前のように、そのティーカップを啜る。

…本当に無料のサービスなんだ。これ。

…。

俺は、紅茶に口をつけてみた。

…うん。熱々で濃厚で、美味しい。

無料サービスなんだから、出涸らしの出涸らし、くらいの茶葉を使ってるんじゃないかと思ったんだが。

そんなことない。ちゃんと葉っぱから淹れた紅茶だよ、この味は。

これがサービスなんて…。…良い店に来たもんだ。

「…こういうの、キルディリア魔王国じゃ普通なのかな?」

シルナも紅茶をひとくち飲んで、その質の良さに驚いたらしい。

「…そうかもしれないな…」

空港でも、待合室で待ってる間、スッと紅茶とサンドイッチが出てきたもんな。

俺もシルナも手を付けなかったけど、ホテルの部屋の中にも、アメニティとして数種類のお茶と、それから軽食が用意されていた。

本来これは、あの追い出された男性の為に用意されたものかと思うと。

とてもじゃないけど、飲み食いする気になれなかったが…。