この国は恐ろしい国だ。
キルディリア魔王国に、たった一晩泊まっただけで、俺はそのことを痛感していた。
ジャマ王国に対しても、かつて俺はそう思った。
親が子を捨て、その子を国が暗殺者として育て、他国に刺客して送り込むような国。
令月とすぐりの祖国、あんなに酷い国は他にはないと思っていた。
だけど、ここにもあった。
ジャマ王国とはまた違う恐ろしさが、この国にはあったのだ。
先客であった非魔導師の男性を追い出して、居心地の悪い部屋で、俺とシルナは一晩を過ごした。
長旅で疲れているはずなのに、ほとんど眠れなかった。
多分、シルナもそうだったと思う。
翌朝になっても、気分は優れないままだった。
…正直、もうこのホテルには一分一秒だって、長居したくはなかった。
チェックアウトの時間になると、俺達は真っ先にホテルのフロントに行き、支払いをした。
しかし、ホテルのスタッフは、相変わらず俺達の不機嫌の理由が分からないようで…。
「おはようございます。随分と早く出ていかれるんですね。…朝食はお済みですか?」
支払いをしている最中に、そう尋ねてきた。
「いや…。…まだだけど」
「ホテル内にレストランや売店がありますよ」
「…ちょっと、あまりそういう気分じゃないから」
これ以上、このホテルに居たくないんだよ。それだけだよ。
「そうですか…。でしたら、この近くに飲食店街がありますから、是非行ってみてください」
「…あ…。…どうも…」
とてもじゃないけど、呑気に朝飯、って気分じゃない。
だが、このホテルスタッフに悪意がないことは分かっている。
八つ当たりしたって仕方なかった。
俺達はチェックアウトを済ませ、にこやかにお辞儀をするホテルスタッフに愛想笑いを返して、忌々しいホテルを出た。
…はぁ。
「…随分早くでてきてしまったけど、これからどうする?」
「王都に向かって…。王宮に行かなきゃいけないね」
「…そうだな…」
むしろ、ここからが本番なのだ。
…うじうじしてても仕方ない。
よし。
「…シルナ、朝飯食べに行こうぜ」
「え?」
「この近く、飲食店街があるって言ってただろ?」
少しでも陰鬱な気分を振り払おうと、俺はそう提案した。
折角、外国まで遥々やって来たんだぞ?
観光に来たんじゃないということは、百も承知だが。
少しくらい、旅行気分を味わっても良いのでは?
と言うか、そのくらいの心の余裕はあった方が良い。
それに、シルナの糖分補給にも。
「シルナお前、全然甘いもの食べてないじゃないか」
「…!…そういえば」
ほら。大好物のおやつを忘れるほどに、心の余裕がない。
船に乗った当初は、持参したチョコ菓子だの、船の中で買ったアイスクリームだのを、ばくばく食べていたけれど。
途中から、酷い船酔いでほとんど何も食べられず。
昨日入国してからは、お互い何も食べていない。
ここいらでシルナに糖分を補給させないと、いざって時に頭が働かないぞ。
何せシルナは、お砂糖で稼働してるんじゃないかってくらい、甘いものが好きだからな。
「羽久が私に失礼なことを考えてる気がするけど、久々に身体が糖分を欲してて、それどころじゃない…!」
「そうか」
それじゃ、思いっきり補給してくれ。
キルディリア魔王国に、たった一晩泊まっただけで、俺はそのことを痛感していた。
ジャマ王国に対しても、かつて俺はそう思った。
親が子を捨て、その子を国が暗殺者として育て、他国に刺客して送り込むような国。
令月とすぐりの祖国、あんなに酷い国は他にはないと思っていた。
だけど、ここにもあった。
ジャマ王国とはまた違う恐ろしさが、この国にはあったのだ。
先客であった非魔導師の男性を追い出して、居心地の悪い部屋で、俺とシルナは一晩を過ごした。
長旅で疲れているはずなのに、ほとんど眠れなかった。
多分、シルナもそうだったと思う。
翌朝になっても、気分は優れないままだった。
…正直、もうこのホテルには一分一秒だって、長居したくはなかった。
チェックアウトの時間になると、俺達は真っ先にホテルのフロントに行き、支払いをした。
しかし、ホテルのスタッフは、相変わらず俺達の不機嫌の理由が分からないようで…。
「おはようございます。随分と早く出ていかれるんですね。…朝食はお済みですか?」
支払いをしている最中に、そう尋ねてきた。
「いや…。…まだだけど」
「ホテル内にレストランや売店がありますよ」
「…ちょっと、あまりそういう気分じゃないから」
これ以上、このホテルに居たくないんだよ。それだけだよ。
「そうですか…。でしたら、この近くに飲食店街がありますから、是非行ってみてください」
「…あ…。…どうも…」
とてもじゃないけど、呑気に朝飯、って気分じゃない。
だが、このホテルスタッフに悪意がないことは分かっている。
八つ当たりしたって仕方なかった。
俺達はチェックアウトを済ませ、にこやかにお辞儀をするホテルスタッフに愛想笑いを返して、忌々しいホテルを出た。
…はぁ。
「…随分早くでてきてしまったけど、これからどうする?」
「王都に向かって…。王宮に行かなきゃいけないね」
「…そうだな…」
むしろ、ここからが本番なのだ。
…うじうじしてても仕方ない。
よし。
「…シルナ、朝飯食べに行こうぜ」
「え?」
「この近く、飲食店街があるって言ってただろ?」
少しでも陰鬱な気分を振り払おうと、俺はそう提案した。
折角、外国まで遥々やって来たんだぞ?
観光に来たんじゃないということは、百も承知だが。
少しくらい、旅行気分を味わっても良いのでは?
と言うか、そのくらいの心の余裕はあった方が良い。
それに、シルナの糖分補給にも。
「シルナお前、全然甘いもの食べてないじゃないか」
「…!…そういえば」
ほら。大好物のおやつを忘れるほどに、心の余裕がない。
船に乗った当初は、持参したチョコ菓子だの、船の中で買ったアイスクリームだのを、ばくばく食べていたけれど。
途中から、酷い船酔いでほとんど何も食べられず。
昨日入国してからは、お互い何も食べていない。
ここいらでシルナに糖分を補給させないと、いざって時に頭が働かないぞ。
何せシルナは、お砂糖で稼働してるんじゃないかってくらい、甘いものが好きだからな。
「羽久が私に失礼なことを考えてる気がするけど、久々に身体が糖分を欲してて、それどころじゃない…!」
「そうか」
それじゃ、思いっきり補給してくれ。


