俺達が唖然としていると、そこにホテルスタッフがやって来た。
何事もなかったみたいに、にこやかな表情で。
「お騒がせ致しました。お部屋の準備が出来ましたので、ご案内致します」
いや、ご案内じゃなくてさ。
「あの…さっきの男の人は…」
「え?…あぁ、お客様は何も気になさらなくて結構ですよ」
「でも…あの人、部屋を取ってたんじゃないのか?もしかして、あの人を追い出して俺達の部屋を…」
「…?そうですけど…」
…やっぱり。
もう無理か?もう遅いか?
シルナが青ざめて、ホテルスタッフに訴えた。
「さ、さっきの人っ…。急いで呼びに行かないと…!」
「え、何故ですか?」
な、何故ですかって。
「だって、あの人が先に部屋を取ってたんだろう?」
一ヶ月も前から予約してた、って言ってたじゃないか。
それなのに、今日、いきなりぽっと出の俺達がやって来て、予約してたあの男性を追い出してしまった。
そんなの許される訳ないじゃないか。
…それなのに、俺達が何を焦ってるのか、ホテルのスタッフには分からないようで。
「…?お客様はオレンジカード、魔導師なのでしょう?ですから、これは当然のことです」
「当然って…先客を追い出すのが当然なのか?」
「だって、彼は魔導師ではありませんから」
「…」
…魔導師じゃないから、って。
そんな…そんな当たり前のことのように…。
「魔導師のお客様が優先に決まっています。どうぞ遠慮なさらず」
「遠慮とか…そういうことじゃなくて…!」
「…もうやめよう、羽久」
思わず言い返しそうになったところを、シルナが制止した。
「シルナ…!」
シルナだって分かってるだろう。
魔導師だからとか、魔導師じゃないからとか、そんなものは人を差別する理由にならない。
こんなことが許されてはいけないのだ。魔導師か否かによって、態度や扱いを変えるなんて…。
…しかし。
「私達がいくら言っても無駄だよ。…これが、この国の文化なんだから」
「…!」
「受け入れられないのは分かるよ。だけど…これがこの国の決まりである以上、私達にはどうすることも出来ない」
「…」
シルナの言う通りだった。
俺に何が出来るというのだ。…さっきの彼を追いかけていって、自分達は出ていくからホテルに戻ってください、とでも言うのか?
そんなことしたって、それは俺達の自己満足に過ぎない。
ホテル側は受け入れないだろうし、彼自身…ここまで侮辱されて、差別されて、今更このホテルに泊まりたいと思うはずがない。
シルナの言う通り。俺達には有り得ない価値観でも、これがこの国の文化。常識なのだ。
…それを変えることなど出来ない。
「…ごめん、シルナ」
「ううん…。…私も、羽久と同じ気持ちだよ」
そうだろうな。
魔導師じゃない人が、あんな形で目の前で差別されるのを見て。
俺よりも、シルナの方がずっと傷ついているはずだ。
「…」
それでもホテルのスタッフは、俺達のそんなやり取りが理解出来ないらしく。
変なことを言う客だなぁ、とでも言いたそうに、怪訝な顔で見つめていた。
そのことが、またどうしようもなく虚しかった。
何事もなかったみたいに、にこやかな表情で。
「お騒がせ致しました。お部屋の準備が出来ましたので、ご案内致します」
いや、ご案内じゃなくてさ。
「あの…さっきの男の人は…」
「え?…あぁ、お客様は何も気になさらなくて結構ですよ」
「でも…あの人、部屋を取ってたんじゃないのか?もしかして、あの人を追い出して俺達の部屋を…」
「…?そうですけど…」
…やっぱり。
もう無理か?もう遅いか?
シルナが青ざめて、ホテルスタッフに訴えた。
「さ、さっきの人っ…。急いで呼びに行かないと…!」
「え、何故ですか?」
な、何故ですかって。
「だって、あの人が先に部屋を取ってたんだろう?」
一ヶ月も前から予約してた、って言ってたじゃないか。
それなのに、今日、いきなりぽっと出の俺達がやって来て、予約してたあの男性を追い出してしまった。
そんなの許される訳ないじゃないか。
…それなのに、俺達が何を焦ってるのか、ホテルのスタッフには分からないようで。
「…?お客様はオレンジカード、魔導師なのでしょう?ですから、これは当然のことです」
「当然って…先客を追い出すのが当然なのか?」
「だって、彼は魔導師ではありませんから」
「…」
…魔導師じゃないから、って。
そんな…そんな当たり前のことのように…。
「魔導師のお客様が優先に決まっています。どうぞ遠慮なさらず」
「遠慮とか…そういうことじゃなくて…!」
「…もうやめよう、羽久」
思わず言い返しそうになったところを、シルナが制止した。
「シルナ…!」
シルナだって分かってるだろう。
魔導師だからとか、魔導師じゃないからとか、そんなものは人を差別する理由にならない。
こんなことが許されてはいけないのだ。魔導師か否かによって、態度や扱いを変えるなんて…。
…しかし。
「私達がいくら言っても無駄だよ。…これが、この国の文化なんだから」
「…!」
「受け入れられないのは分かるよ。だけど…これがこの国の決まりである以上、私達にはどうすることも出来ない」
「…」
シルナの言う通りだった。
俺に何が出来るというのだ。…さっきの彼を追いかけていって、自分達は出ていくからホテルに戻ってください、とでも言うのか?
そんなことしたって、それは俺達の自己満足に過ぎない。
ホテル側は受け入れないだろうし、彼自身…ここまで侮辱されて、差別されて、今更このホテルに泊まりたいと思うはずがない。
シルナの言う通り。俺達には有り得ない価値観でも、これがこの国の文化。常識なのだ。
…それを変えることなど出来ない。
「…ごめん、シルナ」
「ううん…。…私も、羽久と同じ気持ちだよ」
そうだろうな。
魔導師じゃない人が、あんな形で目の前で差別されるのを見て。
俺よりも、シルナの方がずっと傷ついているはずだ。
「…」
それでもホテルのスタッフは、俺達のそんなやり取りが理解出来ないらしく。
変なことを言う客だなぁ、とでも言いたそうに、怪訝な顔で見つめていた。
そのことが、またどうしようもなく虚しかった。


