それから、短冊には他にも。
「…これは…」
短冊からはみ出さんばかりに、達筆な筆使いで。
墨と筆で、願い事が書いてあった。
「五穀豊穣」と。
…これは願い事なのか?
「これ…。絶対令月だろ」
「多分ね…」
このイーニシュフェルト魔導学院で、墨汁と筆を常用しているのは令月だけだ。
あいつ、未だに、頑なに鉛筆を使わないんだが。なんかこだわりでもあるのか?
無駄に達筆なものだから、短冊と言うより、書道の作品みたいに見えるんだが。
しかも、五穀豊穣って。
そして、その令月の短冊の隣には。
今度は、令月ほど太い字ではないけど、筆ペンで書かれた願い事が。
「豊作祈願」。…だってさ。
…こっちは、絶対すぐりだな。間違いない。
二人揃って、願い事の方向性がおかしい。
ついでに、その横に別の短冊が。
「野菜がすくすく育ちますように」とのこと。
…これは多分、園芸部の部長、ツキナ・クロストレイの願い事だな。
凄いな。名前書いてないのに、誰の書いた短冊なのか分かるぞ。
…すると、そこに。
「…何やってるんです。あなた達は」
「あっ、イレースちゃん!」
例によって、郵便物を届けに来たイレースと遭遇。
笹に吊るされた短冊を眺めている俺達を、冷ややかな眼差しで見下ろしていた。
ひぇっ。
「随分と暇そうですね。羨ましいことです」
イレース渾身の嫌味が突き刺さる。
いてぇ…。グサッと来たよ、今…。
しかし、シルナはそんなことではへこたれない。
「今ね、みんなが描いてくれた願い事を見てたんだよ。良かったらイレースちゃんも、」
「書きません。馬鹿らしい」
ばっさり。
「そう言わず!書いたら織姫様と彦星様が、お願い事を叶えてくれるかもしれないよ?」
「有り得ません。大体織姫と彦星は、怠惰の罪によって引き離されたんじゃありませんか。そんな愚か者に叶えてもらう願い事などありません」
ド正論。
「他力本願とは情けない。自分の願い事は、自分で叶える努力をしなさい」
…まったくイレースにかかったら、織姫と彦星も涙目だな。
身も蓋もない。
「そんなことより、さっさと…」
と、イレースが小言を言いかけた、その時。
平和だった日常が、唐突に崩れ去った。
「学院長先生っ、羽久さん…!」
「えっ…。シュニィ…?」
聖魔騎士団魔導部隊隊長のシュニィが、息を切らして駆けつけてきた。
「…これは…」
短冊からはみ出さんばかりに、達筆な筆使いで。
墨と筆で、願い事が書いてあった。
「五穀豊穣」と。
…これは願い事なのか?
「これ…。絶対令月だろ」
「多分ね…」
このイーニシュフェルト魔導学院で、墨汁と筆を常用しているのは令月だけだ。
あいつ、未だに、頑なに鉛筆を使わないんだが。なんかこだわりでもあるのか?
無駄に達筆なものだから、短冊と言うより、書道の作品みたいに見えるんだが。
しかも、五穀豊穣って。
そして、その令月の短冊の隣には。
今度は、令月ほど太い字ではないけど、筆ペンで書かれた願い事が。
「豊作祈願」。…だってさ。
…こっちは、絶対すぐりだな。間違いない。
二人揃って、願い事の方向性がおかしい。
ついでに、その横に別の短冊が。
「野菜がすくすく育ちますように」とのこと。
…これは多分、園芸部の部長、ツキナ・クロストレイの願い事だな。
凄いな。名前書いてないのに、誰の書いた短冊なのか分かるぞ。
…すると、そこに。
「…何やってるんです。あなた達は」
「あっ、イレースちゃん!」
例によって、郵便物を届けに来たイレースと遭遇。
笹に吊るされた短冊を眺めている俺達を、冷ややかな眼差しで見下ろしていた。
ひぇっ。
「随分と暇そうですね。羨ましいことです」
イレース渾身の嫌味が突き刺さる。
いてぇ…。グサッと来たよ、今…。
しかし、シルナはそんなことではへこたれない。
「今ね、みんなが描いてくれた願い事を見てたんだよ。良かったらイレースちゃんも、」
「書きません。馬鹿らしい」
ばっさり。
「そう言わず!書いたら織姫様と彦星様が、お願い事を叶えてくれるかもしれないよ?」
「有り得ません。大体織姫と彦星は、怠惰の罪によって引き離されたんじゃありませんか。そんな愚か者に叶えてもらう願い事などありません」
ド正論。
「他力本願とは情けない。自分の願い事は、自分で叶える努力をしなさい」
…まったくイレースにかかったら、織姫と彦星も涙目だな。
身も蓋もない。
「そんなことより、さっさと…」
と、イレースが小言を言いかけた、その時。
平和だった日常が、唐突に崩れ去った。
「学院長先生っ、羽久さん…!」
「えっ…。シュニィ…?」
聖魔騎士団魔導部隊隊長のシュニィが、息を切らして駆けつけてきた。


