神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

オレンジカードって…この、さっきもらった魔導師証明書のことだよな?

旅行者用の…オレンジ色のカード。

「そう…ですけど」

「申し訳ありませんが、当ホテルのスイートルームは、ゴールドカード、つまり上級魔導師のお客様しかお泊め出来ない決まりなんです」

「…!」

…マジ?

キルディリア魔王国民の中でも、選ばれし優秀な魔導師しか泊まれないってことか?

さっき、魔導師証明書如何によって、利用出来る施設が変わるって言ってたけど。

あれはこういうことだったのか。

「そ…そうなんですか。どうしても駄目なんですか…?他に泊まるところがなくて…」

「申し訳ありませんが…そういう決まりですので」

シルナが何とか食い下がろうとしたが、やっぱり断られた。

そう言うフロント係の首には、シルバーの証明書がかけられていた。

…ってことは、この人も魔導師なのか…。

「…シルナ。仕方ない、ここは諦めよう」

「う…。…そうだね…」

残念だけど、俺達にはスイートルームに泊まる資格はないらしい。

「他に、この近くに泊まれそうなホテルはありませんか?」

俺達オレンジカード持ちでも、問題なく泊まれるホテル。

「そうですね…。…ちょっと難しいですが…」

「…そこを何とか…」

「…当ホテルから東へ300メートルほど行ったところに、一応、別のホテルがありますけど…」

あるんじゃないか。

あるなら教えてくれよ。勿体振ってないで。

「ですがあのホテルは…ちょっと」

「え…。何かあるんですか」

曰く付きとか?幽霊が出るとか?

もう良いよ、幽霊くらい。悪霊でないなら良し。

シルナはビビるかもしれないけど。

「いえ…。あのホテルは、青カードも利用出来るので…」

「…」

「非魔導師が宿泊してるかもしれませんよ。それでも良ければ…」

…別に、何も他の人と一緒の部屋を使わなきゃいけない訳じゃないんだろ?

別の部屋に非魔導師のお客さんが泊まってるかもしれないからって、何でそんな嫌そうな顔をする必要があるんだ?

「…そうですか。でも、自分らはそういうことは気にしないので」

「そうですか…?」

変わってますね、と言わんばかり。

変わってるのはそっちだ。

こんなホテルに泊まらなくて良かった。と思った。

例えスイートルームに無料で招待されたとしても、このホテルには泊まりたくなかった。

外で寝る方がマシだっての。

「じゃ、そっちに行ってみます」

俺とシルナは、紹介されたそのホテルに最後の希望を託し。

スーツケースを持って、紹介されたホテルに向かった。