神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

…とはいえ。

もう、来ちゃったんだから仕方がない。

「…。…よし、シルナ。落ち込んでてもしょうがない」

折角船旅も終わって、キルディリア魔王国に入国したんだから。

「王宮に向かうのは明日にして…まずは、今夜の宿を探そうぜ」

「う…うん。そうだね」

ことさらに明るい口調で言うと、シルナも少し、気を持ち直したようだった。

「近くにホテル、あるかな…?」

「ここは港町だし、大丈夫だろ」

きっと、ホテルくらいあるはずだ。





…と、思っていたのだけど。

俺達の考えは甘かった。





「申し訳ありませんが、もう既にお部屋がいっぱいでして…」

「あ、そうなんですか…」

…もう何軒目のホテルだろうか。

ホテルはいっぱいあるのだけど、空室が全然ない。

何処もかしこも満室だらけ。

くそ…考えが甘かったか。

フロントで宿泊をお断りされ、スーツケースを手にホテルを出る。

「羽久…どうしよう。外、もう暗くなってきちゃったよ…」

「あぁ…。…ヤバいな」

俺達、このままじゃ今晩、外で夜を明かすことになるぞ。

俺はともかく、老体のシルナには辛い。

「羽久が私に失礼なことを考えてる気がする…」

「良いから。他にホテル…ないのか…?」

周辺をきょろきょろ。

もうこの際、すっごい安い民宿とかでも良いよ。

とにかく屋根のあるところで眠れるなら。

「おっ…。あっちにも建物があるぞ。あれもホテルか?」

「行ってみよう」

とにかく日が暮れる前にと、急ぎ足で向かう。

幸い、そこもホテルだった。

いよいよ切羽詰まってるから、ここに宿泊出来ないとヤバい。

「あの〜…すみません。部屋、空いてますか…?」

俺とシルナは、恐る恐るフロントに尋ねた。

すると。

「はい、少し待ってくださいね…。…。…えぇと…」

…どうだろう?

「…あー…」

…何?その「あー」って。

「やっぱり満室ですか…?」

「いえ…。一室だけ、空いてはいるんですが…」

え、マジ?

良かったぁ。

「実は、このお部屋…最上階のスイートルームでして…」

「すっ…スイートルーム?」

つまり、このホテルで一番お高い部屋しか空いてないよ、ってこと?

…うーん。これはキツいか。

だけど…外で寝るよりマシだよなぁ?

「シルナ…良いんじゃないか?この際、もう…スイートルームでも」

「そうだね…。…後でイレースちゃんに怒られるかもしれないけど…」

そんな高い部屋に宿泊するくらいなら、段ボールハウスでも建てなさい。とか言われそう。

…しかし。

「あの…失礼ですが、お客様はオレンジカードですよね?」

「えっ?」

フロント係は、困ったような顔でこちらに尋ねた。