神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

魔法を使ってみせてください、って言われても…。

俺とシルナは、互いに顔を見合わせ。

「えぇっと…それじゃあ…。…eirf」

シルナは杖を手に、魔法を発動した。

炎魔法である。

杖の先に、小さくポッ、とマッチのような火がともった。

それを見て、女性審査官は少し驚いたようだった。

俺達が本当は魔導師じゃないって、本気で疑っていたのだろう。

「それじゃ、俺は…。…eimt ptos」

俺は、部屋の壁時計に向かって時魔法をかけた。

カチカチと秒針が動く音が、ぴたりと止まった。

時魔法で、時計の動きを止めたのである。

「…!これは…。…時魔法ですか」

審査官も気づいたようだ。

「あ、はい…。俺に出来る魔法は、このくらいなんですが…」

「時魔法を使う魔導師とは…。とても優秀な魔導師なんですね」

「いや、別にそんなことは…」

確かに、比較的珍しい魔法ではあるけれど。

ほんの少し時計を止めるくらいの時魔法なら、シルナでも出来るぞ。

「先程は失礼しました。お二人は魔導師なんですね。確認しました」

女性審査官の態度の変貌に、俺は戸惑いを隠せなかった。

さっきまで、めっちゃ睨んできてたのに。

俺達が本当に魔導師だと分かった瞬間、またしてもコロッと態度が変貌。

にこにこと、愛想の良い笑顔を浮かべていた。

な、何なんだ…?

「では、お二人共に魔導師証明書を発行致しますので、別室でお待ちいただけますか?」

「え?あの、はい。でも、魔導師証明書って一体…」

「我がキルディリア魔王国では、全ての国民、外国からの旅行者に至るまで、この国に入る全ての魔導師に対して、魔導師証明書を発行しているのです」

は、はぁ?

「一歩でも外に出る時は、常にその証明書見える位置に携帯することが義務付けられています。これは旅行者であっても変わらないので、旅行中は証明書を肌見放さず持ち歩いてくださいね」

「…」

「決して無くさないように気をつけてください。証明書がなければ利用出来ない施設やサービスがありますから。まさか、あなた方も非魔導師と間違われたくはないでしょう?」

…何だよ、それ。

俺は別に、そんなつもりで…。

「それでは、今すぐ証明書を作成しますから。こちらでお待ちを…」

と、女性入国審査官が言いかけたその時だった。




「いやぁぁぁぁ!やめてぇぇぇぇ!」

突然、凄まじい叫び声が聞こえてきて。

俺とシルナは飛び上がるほど驚いて、声のした方向を向いた。

そこには、半狂乱になって叫ぶ若い女性が、入国検問所の職員に羽交い締めにされていた。