神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

しかし、本当に驚いたのは、キルディリア魔王国に到着してからのことだった。







…長い長い船旅を経て、船はようやく、キルディリア魔王国の港に到着した。

「はぁ、はぁ…。…着いたぁ…」

シルナ、思わず感激の涙。

…結局、船旅の間中、シルナは船酔いに苦しめられていた。

俺はと言うと、乗務員さんにもらった酔い止め薬のお陰か、それとも身体が船に慣れてくれたお陰か。

途中からは、だいぶ回復してたんだが。

まぁシルナはアレだ。歳だからな。

「うぅ…。羽久が私に失礼なこと考えてる気がするよぅ…」

「良いから。さっさと船を降りるぞ」

帰りもこれに乗らなきゃいけないの、分かってるよな?

これに懲りたら、船旅での暴飲暴食は控えるんだな。

俺はへろへろのシルナを引き連れ、船を降りて、陸地に立った。

あぁ、揺れてない大地。素晴らしい。

…しかし。

早速、キルディリア魔王国にやって来た俺達に、最初の「洗礼」が待っていた。

キルディリア魔王国の船は、港の入国検問所を併設しており。

船を降りるなり、真っ先にそこに直行させられた。

そこで待っていたのは、にこやかな女性の入国審査官。

「こんにちは。ようこそキルディリア魔王国へ」

「あ、はいどうも…」

俺は、シルナと自分の分のパスポートを提示した。

しかし、審査官は、パスポートをちらりと一瞥しただけで。

ろくに確認もせず、俺達に奇妙な質問をした。

「失礼ですが、魔導師証明書はお持ちですか?」

「え?」

…何だって?

「まど…。…え?」

「魔導師証明書です。…お持ちではないんですか?」

さっきまで、にこやかだったはずの女性審査官の顔が。

一気に暗く、険しくなった。

えっ…。

「あ、あの…。魔導師証明書…?って何ですか?」

「…失礼ですが、あなた方は魔導師ですか?」

「え…?」

何で、そんなことを聞いてくるんだ?

俺も、それにシルナもぽかんとしていた。

俺とシルナが魔導師かどうかなんて、入国するのに何の関係があるんだ?

「…非魔導師ですか?」

「あ、いえ…。魔導師ですけど…。…一応…」

「…お連れ様も?」

「はい…」

俺はそう答えたのだけど、入国審査官は露骨に疑わしげな顔。

「お前、本当に魔導師か?」と、露骨に不審そうな眼差しで睨んでくる。

な、何なんだこの態度の変貌は。

「では、今ここで証明していただけますか」

「しょ…証明って?」

「何か魔法を使ってみせてください。本当に魔導師なら、出来ますよね?」

「…」

あまりに驚いて、面食らってしまって。

俺もシルナも、にわかに返事が出来なかった。