神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

…一方、マシュリタクシーに乗車(?)中の俺達一行は。

「…どうだ?追ってきてるか」

「いや…どうやら見逃してくれるようだ」

「良かった…」

どうやら、無事にルーデュニア聖王国に帰れそうだ。

全員、揃って。

…本当に良かった。

俺は心の底から、ほっと胸を撫で下ろしていたのだが…。

「あばばばば。たすけ、助けて。あばばばままま」

「あひゃれないれ。ほとすほ(暴れないで。落とすよ)」

「いやぁぁぁぁ!」

…マシュリの口に咥えられたままのシルナは、半泣きで叫び声をあげていた。

「…マシュリ。シルナをこっちに放り投げてくれ」

「ははった(分かった)」

「ひゃぁぁぁぁ!」

マシュリは、口に咥えていたシルナを、モノのように背中に放り投げた。

ひゅーん、とマシュリの背中に落下するシルナ。

よう。

「…大丈夫か?」

「ふわぁぁぁん!踏んだり蹴ったりだぁぁぁ」

それは気の毒だったな。

でも、お陰で全員無事だったから。

シルナが床に顔をぶつけて鼻血を出そうと、マシュリの口に咥えられて放り投げられようと、そんなものは安い犠牲だな。

「うぅぅ…。羽久が私に失礼なことを考えてる気がするよぉ…」

「気の所為だ」

「…まったく騒がしい男です」

情けないシルナの姿を見て、イレースは小言を言っていた。

…まぁ、こんな小言が言えるのも、全員無事だったからこそだ。

「…でさー。落ち着いたところで、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

と、すぐりが言い出した。

すぐりも令月も、マシュリタクシーに乗るのは初めてのはずだが。

二人共、空の上を飛ぶことも、超高速で運ばれることも、少しも怖がっていないようだ。

…さすが。肝が据わってる。

「何だ?」

「『八千代』が戻ってきてるのは知ってたよ。…本当は、俺だけが戻るって約束だったんだけどねー」

「…」

お前…。

「…令月の代わりに、お前一人だけで『アメノミコト』に戻るつもりだったんだな?」

「え?うん」

うん、じゃねぇよ。

そんな当たり前のような顔して言うな。

「それが一番、ごーりてきだと思ったんだよ」

「何が合理的だよ…。何も合理的じゃないっての」

「僕は、『八千歳』がルーデュニア聖王国に残ってると思ってた」

一方の令月の言い分が、これである。

「代わりに僕が『アメノミコト』に戻るべきだって…」

「なんでさ?どー考えても、君の方が残るべきだったでしょ」

「どうして?僕は『八千歳』の方が…」

…お互いに譲り合ってどうするんだよ。

でも…この気持ちを、互いに利用されたんだな。

令月はすぐりを、すぐりは令月を…それぞれ助ける為に、自分を犠牲にしようとした。

…お前らって奴は。

「馬鹿だなー。大人しく君が残ってれば良かったのに…」

「だって、僕は『八千歳』が残った方が良いと思ったから」

お前ら二人共馬鹿だよ。お似合いだ。

どっちかじゃなくて、どちらも、一緒に居なきゃいけないんだよ。

ルーデュニア聖王国の、イーニシュフェルト魔導学院に。

そこが、お前達二人の居場所なんだから。

どちらが欠けてもいけないのだ。

「まったくもー…。しょーがないなー、『八千代』は」

「お前もだけどな、すぐり」

「…それより、ずっと気になってたことがあるんだけどさー」

話を逸らすなよ。

「なんで、ナジュせんせーまで『アメノミコト』にいたの?」

…え。