神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「…」

『玉響』は、俺達が飛び立った風穴を、じっと黙って見上げていた。

彼は、ベリクリーデの爆弾魔力攻撃を、すんでのところで回避していたのだ。

…ただし、俺達を止めることは出来なかった。

いや、止めなかった…と言うべきか。

「…鬼頭様。やはり逃げられました」

『玉響』は、耳につけたインカムを使って、鬼頭夜陰に報告した。

アジトに穴まで開けられたのだ。この騒動は、遠からず鬼頭にも届くはずだ。

「追撃部隊を編成しましょうか」

今すぐ追いかければ、まだ間に合うかもしれない。

そう思っての提案だったが…。

『追わんで良い』

鬼頭夜陰は、報告した『玉響』にそう答えた。

『必要なものは既に入手しておる。むしろ、命令に従わぬ駒など無価値でしかない』

「…分かりました」

鬼頭が言う、「必要なもの」。

それが何なのか、逃げるのに必死な今の俺達は、まだ知らなかった。