神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

それから、最後に。

「…僕も、かつて君達の為に…自分を犠牲にしようとして、助けてもらった身だから…偉そうなことは言えないけど」

ずっと黙っていたマシュリさんが、ゆっくりと口を開いた。

「君は、冥界に足を踏み入れてまで僕を助けに来てくれた。だから、僕も同じことをするよ。誰に何を言われても。君自身がそれを拒絶したとしても」

「…マシュリさん…」

「お節介だと思う?…だけど、それが、君達が僕にしたことだよ」

…うん、そうだったね。

仲間のことは無条件で助けに行く癖に、自分は助けてもらいたくない、なんて。

それは通じないよ。

だから…もう、お願い。

自分の気持ちに…嘘はつかないで。

「…一緒に帰ろうよ、ナジュ君」

僕はもう一度、ナジュ君に手を差し伸べた。

ナジュ君は震える瞳で、僕の手を見つめていた。

「僕には、僕達には…君が必要なんだ。いつかじゃなくて、今…一緒に帰りたいんだよ」

「…天音さん。…イレースさん…マシュリさん…」

その為に、僕らはここまで来たんだよ。

…それでもナジュ君が「帰らない」って言ったらどうしよう。

…よし。

その時は…僕も『アメノミコト』に転職しよう。

するとナジュ君は、僕のそんな心の中を読んでいたらしく。

「…天音さんに、暗殺者は無理なのでは?」

「うっ…。じ…自分でもそう思うけど…」

「そうだ。トゥルーフォーム時の天音さんなら…」

「あ、あぁぁぁ!だから、それは駄目だって!」

僕は慌てて、ナジュ君の口を塞いだ。

それは言わないでって。分かって言ってるでしょナジュ君。

「…まったく、あなた達と来たら…本当に物好きで、困った人ですよ」

ナジュ君は呆れたように、でも…何処か嬉しそうに呟いた。

「…うん、そうかも」

「だけど…。…そうですね。僕も自分に嘘つくの、やめます」

うん。…そうして。

ナジュ君は、そっと僕の手を取った。

「僕も一緒に帰りたいです。…連れて帰ってください」

「…うん」

僕はしっかりと、ナジュ君の手を握り返した。

絶対、この手を離したりはしないから。