神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

僕は、ずっと後悔していた。

自分の目の前で、ナジュ君を連れ去られてしまった…あの時のことを。

僕が無力だったばかりに。僕が油断してしまったばかりに。

ナジュ君は僕を守る為に、自ら、『アメノミコト』に連れて行かれた。

あの時からずっと…僕は、一瞬たりとも、自分を責めない瞬間はなかった。

学院長先生はもちろん、学院のみんなは優しいから。

ナジュ君が連れ去られたのを、僕のせいだとは言わなかった。

誰も僕を責めなかった。あの時は仕方なかったと言ってくれた。

だけど、僕は…僕だけは、どうしても自分を許せなかったのだ。

「僕のせいで…こんなところまで連れてこられてしまって、本当に…ごめん」

謝っても許してもらえることじゃないかもしれないけど、でも、謝らせて欲しい。

ずっと謝りたかったのだ。

「…あなたが謝る必要はないですよ」

ナジュ君はそう言ってくれた。

…そう言うだろうと思った。

ナジュ君も…学院長先生達と同じように…いや、それ以上に優しい人だから。

僕のせいなのに、絶対に僕を責めないのだ。

「別にあなたを恨んではいません」

「そっか…。…ありがとう」

そう言ってくれて。

それでもまだ、相変わらず自分を許せないけど。

「だけど…こうして、みんなで助けに来たから。一緒に帰ろう」

僕は、そう言ってナジュ君を促した。

「学院長先生と羽久さんと、それからジュリスさんとベリクリーデさんも、一緒に来てるんだよ」

「…あの人達まで…」

「みんなで一緒に、ジャマ王国まで来たんだ」

「…馬鹿なことをしますね、あなた達は。ここがどれほど危険なところか分かってます?」

う。そ、それは。

「でも、冥界よりマシでしょう?」

言葉に詰まった僕の代わりに、マシュリさんが答えた。

「まぁ、それはそうですけど…」

「僕は僕の心臓を取り返す為に、君達に命をかけてもらった。だから、僕も同じことをする」

…マシュリさん…。

それに、イレースさんも。

「さっさと戻ってきなさい」

両腕を組んで、イレースさんはいつも通り、はっきりとした口調で言った。

「あなたがいないせいで、風魔法の授業と実技授業が止まってるんです。学期の途中で勝手に居なくなられちゃ迷惑なんですよ」

う、うん。

イレースさん、ナジュ君を連れ戻したいのは、それが理由なの?

「そこは…嘘でも、『あなたがいないと寂しくて生きていけないわ!』とか言って欲しかったですね…」

「ふん。自惚れるんじゃありません」

ま、まぁイレースさんは…いつもそういう人だから。

…じゃあ、代わりに…って訳じゃないけど。

「ナジュ君。僕は…ナジュ君がいないと寂しくて生きていけないよ」

「…」

「…言っておくけど、これ嘘じゃないからね?本心だからね」

「…知ってますよ」

そうだよね。心が読めるんだもん。

僕が本気で、心の底からそう思ってるってこと…ナジュ君なら分かってくれると思ってた。

「別に心を読むまでもなく…あなたは超ド級に嘘が下手ですからね…」

「え、えぇぇ…」

そ、そんなことはないよ。

…と言いたかったけど、僕が嘘をつくのが下手なのは事実なので、何も言い返せない。