神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

やっと…やっと、久し振りにナジュ君に会えた。

さっきまで、塩対応されて悲しくて泣きそうになっていたけど。

その涙はあっという間に、再会を喜ぶ涙に変わってしまった。

「…無事で、良かった…」

あ、駄目だ…。泣くまいと思ってたのに、涙が…。

「ナジュ君…元気そうで…」

「あ、えっ…。あ、あなた…天音さん…?」

「うん…そうだよ」

ごめん。ちょっと…みっともないよね。涙が…。

だけど…凄く、心配だったから…。

「それに…イレースさんとマシュリさんまで…」

「一体誰と勘違いして、モノを言ってるんです」

「す、すみません…。たまゆ…いや、『アメノミコト』の暗殺者の方かと…」

…たまゆ?

ともかく、ナジュ君がいつものナジュ君に戻ってくれた。

さっきのは、僕達を『アメノミコト』の人だと勘違いしていたんだ。

そうだよね。ナジュ君、こちらに背中を向けてたし…。気づかなかったんだ。

「だって、仕方ないじゃないですか。あなた達が…まさか、こんなところまで来るとは思わなかったから…」

と、ナジュ君。

それはごめんね。

でも、君を助けに行く為なら、僕は何処にでも行くよ。

「僕の心臓を取り返す為に冥界にまで来た人が、今更何を言ってるの?」

マシュリさんが、ズバリとそう言い返した。

「成程、確かに」

…納得しちゃうんだね、ナジュ君。

まぁ…冥界に行った時のことを思えば。

ジャマ王国なんて…近所の公園みたいなものだよ。うん。

近所の公園にしては、かなり、いや相当物騒だけど…。

「…で、なんでそんな格好してるんですか?」

うっ。

「そ、それは…変装の為に…」

「通りすがりの暗殺者を殴って気絶させて、身ぐるみを剥がしてきました」

イレースさん、言い方。言い方。

「成程…。潜入する為には理に適ってますが…でも、天音さんは逆効果だったのでは?」

「えっ?」

「イレースさんとマシュリさんはともかく、天音さんはその黒装束、全然似合ってませんから」

「うぐっ…」

…分かってはいたけど。自覚もしてるけど。

ナジュ君にはっきりとそう言われてしまうと、結構へこむって言うか…。

…そっか。似合ってないのか…。

「天音さん、あなたは暗殺者とは程遠いですからね。溢れ出る優しさと人の良さが、黒装束と不釣り合いで…」

「そ、そうは言うけど…僕だって必死に、」

「せめてトゥルーフォームの天音さんだったら、少しは様になって、」

「あ、あぁぁぁ!それは言わないで!」

慌てる僕を見て、にや、と笑うナジュ君。

もぉぉぉ…。…分かってて言ってるでしょ、そういうこと。

…でも、今ばかりは、こんなやり取りが懐かしかった。

涙が出るくらいに。

僕は、溢れそうになった涙を手の甲で拭った。

泣いてる場合じゃないよね。

ナジュ君は見つけたけど、これから、まだ令月さんとすぐりさんの二人を探さなきゃいけないんだし。

…泣くのは後にして。

「ナジュ君、一緒に行こう」

「…何ですか?」

「帰るんだよ、一緒に」

僕はそう言って、ナジュ君に手を差し伸べた。

その手を、ナジュ君は当然掴んでくれるものだと思っていた。