神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

キルディリア魔王国は、島国である。

そこで俺達は今回、キルディリア魔王国行きの船に乗って、かの国に向かうことにした。

今回は、以前アーリヤット皇国に向かった時のように、密入国じゃない。

船の荷物置き場で、閉塞感と船酔いに苦しみながら、船旅を行う必要はない。

ちゃんと、キルディリア魔王国行きの正式な旅客船に乗って。

きちんと部屋を取って、そこに泊まる予定である。

豪華客船のクルーズ…とは行かないが。

部屋の中は、それなりに快適そうだった。

「見て見て羽久。ジュースとかお菓子、売店で売ってるって」

「…」

「おぉっ。当旅客船名物のフルーツアイスクリームがおすすめだって!これ買いに行こうよ」

…何でこのおっさん、船旅に大はしゃぎなの?

つーか、お前チョコシュークリーム持ってきたんじゃなかったのか。

そっちを先に食べろよ。

まだ船に乗ったばかりたのに、こんな呑気で良いのかよ。

…と思ったが、鬱々として船室に閉じこもってるよりは、マシなのかもな。

「…分かったよ。アイスな」

「うん!チョコ味じゃないけど、たまには良いよね〜」

チョコレートに限らず、甘いものなら基本、何でも好きだからな。シルナは。

アイスでも、何でもござれ。

ついでに、売店で今日の晩飯も買っておこう…。

で、シルナと一緒に船内の売店に行くと。

「おぉ…。…意外と大きいな」

「見て羽久。パン屋さんが入ってる」

あぁ、凄いな。

ショッピングセンターの中にあるようなベーカリーがあって、そこで焼き立てのパンや、淹れ立てのコーヒーを販売していた。

パンだけじゃなくて、サンドイッチやハンバーガーなんかもある。

船のデッキにテーブル席もあるので、ここで買った食べ物を、優雅に海を眺めながら食べることが出来るんだって。

リッチな気分が味わえそうだな。

ベーカリー以外にも、お弁当、お惣菜の品揃えもとても豊富。

市販の菓子パンとかおにぎりしかないのかな、と思ったけど全然そんなことなかった。

「あぁっ、見てよ羽久。お菓子もある!」

シルナは、目ざとく売店の中にスイーツコーナーを発見。

さっき言ってた、船内名物のアイスクリームだけじゃなくて。

お土産用のケーキとか、プリンとか、クッキーとかも売っている。

「美味しそう!買っていこーっと」

…お前、スーツケースの中身全部チョコなんじゃないか、ってくらい、チョコ菓子を持ってきてるのに。

ここでも、菓子を買うのか?

…まぁ良いや。好きにさせておこう。

そして、その判断は正解だった。

というのも、俺達の船旅が平穏だったのは、ここまでだったからである。