神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

や…。…やっと着いた。

「ここ…。ここが、『アメノミコト』のアジト…?」

「…そのようですね。地図によると、アジトの備品倉庫のようです」

と、イレースさん。

倉庫…と言っても、あまり倉庫としては使われていないみたいで。

ほとんど物は置いてなくて、ガラクタ置き場みたいになっていた。

「さぁ。物見遊山しに来た訳じゃないんです。さっさと行きますよ」

「あ、ちょ、イレースさん…」

「…!待って。人が来る」

マシュリさんが、鋭い声で警告した。

えっ。

「ひ、人?ここに?」

「うん。二人…ううん、この足音だと三人。向かってきてる」

「さっ…三人って…」

ど、どうしよう。

まだ潜入したばかりなのに。もうバレたのだろうか?

それとも偶然?偶然通りかかっただけ?

そこの棚に隠れようか?それとも引き返すべき?

一体誰なんだろう。『アメノミコト』の暗殺者?それとも違う人?

僕の頭の中は、あっという間にパニックに陥ったが。

僕に反して、イレースさんはまったく狼狽える様子はなく。

「三人ですか。丁度良い、手伝いなさい」

と、マシュリさんに指示した。

「うん、分かった」

マシュリさんも全然怯えた様子はなく、僕より遥かに冷静だった。

そのまま二人は、倉庫の入り口ににじり寄り、その場にしゃがんで待機。

いや、逃げなきゃいけないんじゃないの。何をして…。

「ふ、二人共。逃げっ…」

と、言いかけた時にはもう遅く。

倉庫の扉が開き、そこから黒装束を身に着けた三人の『アメノミコト』の暗殺者が入ってきた。
 
僕は、思わず息が止まりそうになったけど。

イレースさんとマシュリさんの動きは、速かった。

イレースさんは、左に立っていた暗殺者さんの脳天に、いつもの、いやいつも以上に強烈な拳骨を叩き込み。

ケルベロスの姿に『変化』したマシュリさんは、右に立っていた暗殺者さんのお腹に、アイアンテールを打ち込んだ。

咎める隙もない早業。

ただ倉庫に入ってきただけなのに、強烈な一撃を食らわされて。

気の毒な二人の暗殺者さんは、その場で意識を失って昏倒。

そして、残るは。

「えっ?えっ?」

真ん中に立っていた暗殺者さんだけは、突然倒された左右の二人を交互に見て、物凄く動揺していた。

同じくらい、僕も動揺していたのだが。

「何やってるんです。さっさとやりなさい!」

そんな僕に、イレースさんの鋭い叱咤が飛んだ。

このままじゃ、僕までイレースさんの鉄拳を食らいかねない。

ひっ、と声を出した僕は。

「ご…ごめんなさい!」

そう叫びながら、残る真ん中の暗殺者さんに飛びかかった。

「うわっ…!」

僕には、イレースさんのように殴りかかる度胸も。

ましてやマシュリさんのような、立派な尻尾も当然あるはずがなく。

お腹にタックルするかのように飛びかかると、真ん中の暗殺者さんは真後ろに倒れ。

そのまま、ガッ、と床に後頭部を打ち付け、気絶。

「あ…ご、ごめんなさい…」

「…」

謝ったけど、意識を失っているので、聞こえていない。

だ、大丈夫だろうか?

頭を打ったショックで、深刻なダメージを負わせてしまったんじゃないかと、慌てて暗殺者さんを抱きかかえたけど。

…良かった。ただ頭を打って気絶しただけみたいだ。

ただし、後頭部に大きなコブが出来ている。

…ごめんなさい。