神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

なんてことだ。

こんなところで、二の足を踏んでいる場合じゃないっていうのに。

やっぱり、無理にでもさっきの縄梯子を登るべきだったのか…?

…後悔先に立たず、とはこのこと。

シルナのぎっくり腰は必要な犠牲だったと割り切って、縄梯子を登って先に進めば良かった…。

「…うん。羽久が何か、私に冷たいこと考えてる気がするな…」

「あぁ…そうだな」

認めるよ。今回はな。

でも事実だから。

こんなところで手をこまねいてる暇はないんだよ。

早く、令月達を助けなくては…。

「くそ…。やっぱり戻って、さっきの縄梯子を…」

「羽久、ちょっと落ち着いて」

は?

「ほら、チョコあげるから。チョコ食べてリラックスして」

と言って、シルナは俺の手に、一口チョコを握らせてきた。

いや…こんなことしてる場合かよ。

つーか、下水の匂いがキツ過ぎて、モノを食べる気にならないんだけど?

そもそも何でお前は、こんな時までチョコを持ち歩いてるんだよ。

「あのな…。シルナ、今はそれどころじゃ…」

「令月君達を助けなきゃいけないのは分かってるよ。でも、気を急(せ)いて良いことなんて何もないはずだから」

「…」

…それは…まぁ、そうだけど。

「ここの隠し通路が駄目でも、他にも使える通路があるはずだよ。一緒に探そう」

「シルナ…」

「きっとすぐに見つかるよ。だから、落ち着いて。リラックスして行こう」

「…そう、だな」

…俺が悪かったよ。

急がなきゃ、早く助けなきゃって…そればかり考えて、視野を狭くしちゃ駄目だよな。

「…よし。もっと安全に通れそうな隠し通路を探そう」

「うん。そうしよう」

俺達はあくまで、アジトに通じる隠し通路を探すつもりだった。

まさかこの頃、ジュリスとベリクリーデが、アジトの真正面から潜入していたなんて、思いもしなかったのである。…当然だが。