神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

何はともあれ。

「…よし、ベリクリーデ。よくやった」

まずは、全ての功労者であるベリクリーデを褒め、頭を撫でてやった。

「えへへ」

ご満悦な様子。

間違いなく、お前は今日のMVPだよ。

…それで。

「お前…花曇すぐりだな」

「君達、なんでこんなところにいるの?」

鉄格子の向こうから、花曇すぐりはじろっ、とこちらを睨んだ。

…なんで、じゃないだろ。

お前達の為に来たんだよ。

「…お前、俺等のこと知ってるか?」

「知ってる。聖魔騎士団の大隊長でしょー?剣を使う人と、それからトボけた人」

非常に的確な例えだな。

違うよ、と言えないところが切ない。

しかしベリクリーデは、何を思ったか。

「ジュリスは、とぼけてなんかいないよ?」

「お前のことだよ」

「えっ?」

ふざけんな。とぼけてるのはお前だけだ。

…それより。

「お前…こんなところに閉じ込められてたのか」

「うん」

俺は、そっと鉄格子に触れてみた。

…何の変哲もない。特に何か仕掛けが施されているという訳でもない。

動物や、魔力を持たない人を閉じ込める為の檻だ。

「…なんでこんなところに閉じ込められてるんだ?」

「は?」

「お前こそ、とぼけるなよ。お前なら、こんなところいつでも出られるはずだろ」

「…」

花曇すぐりは黙り込んで、無機質な冷たいコンクリートの床を見つめた。

お前、元『アメノミコト』の暗殺者なんだろう。

糸魔法という、便利な魔法を使う魔導師だそうだな。

そんなお前なら、この程度のチャチな鉄格子に閉じ込められるはずがない。

出ようと思えば、いつだって出られるはずだ。

それなのに、なんでまだ…自ら望んで、閉じ込められてるんだ?

「出てこいよ。こんなところにいても、何も解決しないぞ」

「…分かってないねー、君は」

あ?

「俺は閉じ込められてるんだよ。ここから出られないんだ」

「…」

花曇すぐりが言っているのは、物理的にこの檻から出られない、という意味ではないことはすぐに分かった。

理由があるのだ。

こんなチャチな鉄格子に囚われていなければならない、理由が。

この地下室に、花曇すぐりが縛り付けられている理由が。

「…脅されてるのか?」

それ以外に有り得ない。

「交換条件はなんだ?お前は、何の為に…誰の為に、ここに閉じこもってるんだ」

「…そんなの、言わなくても分かるでしょ?」

「…」

…そうだな。

恐らく、お前にとってもっとも大切な人…。

…黒月令月の為、なんだな。