神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

俺は愕然として、エレベーターの方を見つめた。

エレベーターの扉の向こうには、黒装束を身に着けた、若い女性が二人いた。

見慣れた黒装束でる。

この服を着ているということは、この女性、二人共暗殺者なのだろう。

その女性暗殺者二人と、バッチリ目が合ってしまった。

あぁ…。…終わった。

ごめんな、シルナ・エインリー。俺が…いや、ベリクリーデが間抜けなせいで、こんなにあっさりと…。

…しかし、運命の女神様とやらは、まだ俺を見放した訳ではなかった。

「あ、乗りまーす」

ベリクリーデは少しも狼狽えることなく、デパートの買い物客のような気軽さで、片手を上げた。

「あ、はい…どうぞ」

エレベーターの中に入っていた女性暗殺者が、「開」ボタンを押し続けてくれた。

は?

ベリクリーデは、とてて、と歩いてエレベーターに乗り込む。

そして、俺を手招きした。

「ほらほらジュリス。早く乗らなきゃ」

えっ、嘘だろ?

敵と一緒にエレベーター乗るの?

でも、ベリクリーデをこのまま一人にする訳にはいかなかった。

俺はカクカクのロボットみたいな動きで、続いてエレベーターに乗り込んだ。

言うまでもないが、心臓バックバク状態である。

「何階に?」

「あっ、えっ…。ち、地下2階に…」

「分かりました」

俺が乗り込むと、女性は「閉」ボタンを押し、それから俺達の目的地である、地下2階のボタンを押してくれた。

エレベーターに乗っている時間が、これほど長く感じられたのは人生で初めてである。

「下にまいりまーす」

ベリクリーデは、エレベーターガールの真似をして楽しそうだったが。

俺は緊張し過ぎて、それどころじゃなかった。

同乗している女性暗殺者二人は、俺達を「誰だろう?」とでも聞きたそうな顔でこちらを見ていたが。

…まさか、侵入者が堂々とエレベーターに便乗しているとは思わなかったのだろう。

ベリクリーデがあんまり堂々と、普通にエレベーターに乗り込んできたものだから。

逆にあんまり疑われていないという、非常に奇妙な状況に陥っていた。

…堂々としていることが一番の変装、とはよく言ったものだな。

まさか、この状況でもまだ侵入がバレていないなんて、思ってもみなかった。

やがて、長い長い時間をかけて、エレベーターが目的地に到着した。

長く感じたのは体感だけで、実際は数十秒とか、その程度の時間だったはずだ。

「着きましたよ」

「あっ…は、はい…」

地下2階に着くと、またしてもその女性がわざわざ「開」ボタンを押してくれた。

俺は乗った時と同じく、カクカクの動きでエレベーターから降りた。

…大丈夫だよな?背中から刺されたりしないよな?

一方、ベリクリーデは。

「ありがとう。それじゃあまたねー」

エレベーターの中の二人に感謝の言葉を告げ、ひらひらと手を振った。

…何?この余裕。

俺とベリクリーデが降りると、エレベーターのドアがうぃーん、と閉まり。

不思議そうに首を傾げた二人の暗殺の顔が、見えなくなった。

…で、またエレベーターは更に下に降りていった。

…行っちゃった。

…マジでバレなかった。

…嘘だろ?

「着いたね、ジュリス」

「…あぁ…。…着いちゃったな…」

侵入しておいた俺が言うのもなんだけどさ。

『アメノミコト』、警備、大丈夫か?