神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

正直、「いや、使わないから」と突き返したかったが。

令月は令月なりに、俺達のこと心配してくれてるんだろうし。

…絶対使うことがない、とは言い切れないからな。

使わないとは思うけど。そっくりそのまま返すことを望んでいるけど。

…一応、持っていっておこう。…念の為に。

そして。

「で、これは俺からねー」

と言って、今度はすぐりが、何やら小さめのタッパーをくれた。

「…何これ?」

「暗殺道具は『八千代』が準備するって言ってたからさー。俺は保存食を用意したんだ」

ほ、保存食?

「ほら、違う国に行くと、食べ物が口に合うか心配になるじゃん?」

「そ、それは…まぁ…。…うん」

「だから、舌に馴染むものを持っていくべきだと思うんだよねー」

…それで、このタッパー?

「…何が入ってるんだ?これ」

「大根ときゅうりの糠漬け。ツキナと一緒に作ったんだー」

めっちゃ家庭の味。

お前ら園芸部は、そんなことまでしてるのか。

「うちの畑で穫れた野菜で作ってるんだよ」

自慢げ。

「そ、そうか…。それは…うん、ありがとうな…」

…思いも寄らない選別の品で、反応に困るけども。

前向きに考えよう。この糠漬けは意外と、良い刺激になるかもしれない。

ほら、シルナは甘いものが好きだからな。シルナに付き合って甘いものばっか食べてたら。

不意に、しょっぱいものが食べたくなるかもしれないじゃん?

「じゃ、元気に行ってきてねー」

「気をつけてね」

「お、おぉ…。お前らも元気でな」

それじゃあ、そろそろ行ってくるよ。

…それで。

「やっぱり待って!…チョコタルトも持っていった方が、」

「いつまで荷物を漁ってんだ。さっさと行くぞ!」

「あぁ〜っ!チョコ〜っ!!」

俺は、未練がましくスーツケースをごそごそしているシルナの肩を、むんずと掴み。

半ば引き摺るようにして、玄関から出ていった。
 
仲間達に見送られながら。

それじゃあな。我らがイーニシュフェルト魔導学院。

しばらくのお別れだ。

絶対、またここに…仲間達のもとに帰って来よう。

俺は、心の中で強くそう誓った。