神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

しかし、ベリクリーデは諦めなかった。

「予約、してなきゃ入れないの?」

「それは…。…原則的には…」

「そっかー…。でも、私達が会いたいのは、本当に本当に大切な人なの」

説明を重ねるベリクリーデ。

そろそろ俺も、諦めの境地だぞ。

「どうしても会いたいの。駄目かなぁ」

「大切な人、というのは…?」

「大切な人は大切な人だよ。どうしても今日、会わなきゃいけないんだ」

「一体誰の…。…はっ」

見張り番が、突然声を詰まらせた。

何かに気づいたようだ。

令月達を取り返しに来た賊だとバレたか、とヒヤリとしたが。

「まさか…。鬼頭様の…?」

…え?

「鬼頭様に会いに来られたのですか?」

途端に、見張り番は険しい顔になった。

鬼頭…。『アメノミコト』の頭領だな。

まさか、この見張り番。

アポ無しで訪ねてきた俺とベリクリーデを、『アメノミコト』の頭領、鬼頭夜陰の客だと思い込んでる?

いやいや、俺達はこっそり、おたくのアジトに侵入しに来たのであって…。

…なんて、言える訳がないし。言っても多分、信じないと思う。

誰だって、侵入者が真正面から堂々と入ってくるとは思わないだろ。

俺もさっきまで、隠し通路から侵入するつもりだったし…。

俺達があまりに堂々と入ってきて、しかも堂々と自己紹介までしたものだから。

逆に、見張り番は俺達を怪しい者だと認識していない。

むしろ、『アメノミコト』の頭領、鬼頭夜陰に会いに来た賓客だと思われている。

見当違いも良いところだが、しかし俺は、この見張り番の誤解を利用することにした。

折角誤解してるんだから、そのまま誤解しておいてもらおう。

「え、あ、あー…。…まぁ、そんなところだ」

出来るだけ偉そうな態度で、横柄な口調でそう言った。

嘘です。ただの侵入者です。

「ちょっと…。あの…。おたくの頭領と約束があってな」

などと言いながら、俺の目はスイスイと泳いでいたに違いない。

だが、見張り番はそのことに気づかなかった。

「そ…そうでしたか。これは失礼しました」

慌てて、見張り番は機関銃を降ろし、深々とお辞儀した。

嘘だろ。

侵入しに来たのに、頭を下げられるなんて。

「どうぞ、お入りください」

「お、おぉ…どうも」

「ありがとねー」

俺は大股で歩きながら、正々堂々と真正面の入り口から、アジトに入った。

ベリクリーデは、見張り番にひらひらと手を振っていた。

…偉そうな態度を取ってはいるが、実は心臓はばくばく鳴っている。

何とか、咎められずに忍び込んだ。

…いや、これは忍び込んだと言えるのか?

普通に入っただけでは?

後々、俺達がただの侵入者だと発覚して、あの見張り番が罰を受けないことを祈るばかりである。