これには、マシュリも少し驚いたようで。

「…もしかして僕、信用されてない?」

と、尋ねた。

まさか、そういう訳じゃ。

「確かに僕は…シュニィを…君達の上司を拉致したことがあるけど、あれは…『HOME』の命令で。今は君達のことを…」

「いや待て。違う。そういう意味で言ったんじゃない」

ジュリスは慌てて否定した。

「あんたのことは信用してる。でなきゃ、背中にくっついてジャマ王国まで飛んできたりしねーよ」

爆速マシュリタクシーに便乗した仲だもんな。

「そうじゃなくて、俺達はその…二人で充分戦えるから」

「え…?…でも…ベリクリーデは、あまり戦うことは向いてないんじゃ…」

いかなる時も、ぽやんとしてるベリクリーデ。

今だって、自分のことで揉めていると分かっているのかいないのか。

とぼけた顔で、こてんと首を傾げているので、多分分かってないと思う。

しかも、何を思ったのか。

「…?…大丈夫だよ。ちゃんと、どかーんってするから」

「いや、だからその、どかーんはやめて欲しいんだが…」

俺達の目的は、仲間の救出であって。

『アメノミコト』のアジトに、風穴を開けることではない。

それ、むしろ俺達にも危害が及ばないか?

「あー…うん…。ベリクリーデはまぁ…。向いてないって言うか、戦うべきじゃないって言うか…」

と、困り顔のジュリス。

「でも、ベリーシュがいるし…。いざとなったら『あいつ』もいるだろうし…」

「…あいつ?」

「あー、なんだ。とにかく、こっちのことは大丈夫だ。心配しないでくれ」

…そう言われても。

心配するなって言われたら、余計心配にならないか?

「…本当に大丈夫なのか?」

「本当に大丈夫だ。上手くやってみせるよ」

頼もしい言葉だったが、だけど…。

「本人が大丈夫だと言っているのだから、任せておきなさい」

なおも戸惑う俺に、イレースがきっぱりと言った。

…イレースは相変わらず、割り切るのが早いな。

「それじゃ、僕はイレースと天音についていけば良いんだね?」

と、マシュリ。

「…あぁ、そうだな。頼む」

「分かった」

俺とシルナは、二人で大丈夫だ。

だからマシュリは、イレースと天音を助けてやってくれ。

「良い?みんな、くれぐれも気を付けて。自分達の命を最優先にしてね」

シルナが、みんなに向かってそう言った。

「そして、必ず令月君とすぐり君と、それにナジュ君を連れて帰ろう。みんな一緒に、ルーデュニア聖王国に帰るんだ」

…その通り。

俺達は、その為にジャマ王国まで来たのだから。

決意を新たに、気を引き締めていると。

「おうちに帰るまでが遠足、だもんねー」

「…あのな…お前、遠足じゃねぇんだよ…」

「…」

ベリクリーデの、微妙に間の抜けた一言で、何だか出鼻を挫かれ、

…いや、程よく緊張感がほぐれたのだと思おう。うん。