神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

どうしよう。まだジャマ王国に来たばかりなのに。

通りすがりの親切な人に鉢合わせてしまったが為に、早速ピンチに陥ってる気がする。

「『アメノミコト』に暗殺を依頼するなんて…絶対にそんなことはしてはいけません。彼らは滅ぶべきなんです。だから、代わりに…」

「…ねぇ、きみ」

窮地を救ってくれたのは。

「彼女は信頼出来る」と太鼓判を打った、ベリクリーデだった。

そのベリクリーデが、女性のスーツの袖を、ちょいちょい、と引っ張った。

「どうして、『知ってて』そんなこと言うの?」

「…え?」

これには、ベリクリーデ以外のメンツも驚いた。

…ベリクリーデ?「分かってて」ってどういう…。

「私達のこと、知ってるんだよね?…私達がルーデュニア聖王国から来たことも。仲間を助けに来ただけなんだってことも」

えっ…!?

「なんで嘘、つくの?知らないフリするの?」

「…」

「君は誰?どうして、私達に声をかけたの?…君も、あめのみこと、っていう暗殺者組織の人なの?」

…冗談、で、言ってるんじゃないよな?

ベリクリーデが突然何を言い出したのか、すぐには理解出来なかった。

だけど。

ベリクリーデには、確信があった。

それにベリクリーデは、こんな笑えない嘘や冗談を言う奴じゃない。

何故かは分からないけど、ベリクリーデには確信がある。

…目の前にいるこの女性が、俺達を心配して、気遣っているフリをしながら。

…本当は、ずっと嘘をついているのだ、という確信が。

「ベリクリーデ…!お前さっき、この人は信用出来るって…!」

慌てて、ジュリスがそう聞いた。

「うん。それは大丈夫」

「それは、って…」

「この人は悪いことする人じゃない。だけど、嘘ついてる」

いや、嘘をつくのは悪いことなのでは?

…時と場合による。

「…」

突然、ベリクリーデに嘘つき呼ばわりされた、若いスーツ姿の女性。

彼女はしばらく、じっとベリクリーデを見つめ。

それから。

「…一体どんな超能力を使ったのやら。…とはいえ、あの鬼頭夜陰があなた方を目の敵(かたき)にしている…その理由が、分かった気がします」

突然、口調が変わった。

先程までの、お節介だけど、優しそうな話し方が一変。

冷徹ではないけれど、淡々と、事務仕事でもこなすかのような機械的な口調に聞こえた。

この豹変ぶり。

それじゃあ…まさか、本当に。

「あんた…俺達を騙して、ここまで連れて来たのか…!?」

「えぇ、そうです。あなた方がルーデュニア聖王国の御一行と承知の上で、声をかけさせていただきました。申し訳ありません」

「…!」

なんてことだ。

じゃあ、何か。俺は…自分達がこっそり潜入するつもりが。

逆に、敵の罠にまんまと嵌められてたってことなのか?

…こんな間抜けなこと、ある?