神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

振り向くと、そこに若い女性が立っていた。

パリッとしたスーツ姿の、髪をショートカットにした若い女性。

だ、誰だ?

「…あんたは…?」

ジュリスは目を細め、あからさまに警戒心を強めた。

この国に来てから、現地の人に話しかけられたのは初めてだ。

この人…ジャマ王国の人か?

この場所で、声をかけられるなんて…。もしかして…。

この人も…『アメノミコト』の。

…しかし。

「旅行客の方ですか?ここ一帯は危ないですよ。近寄らない方が良いです」

ショートカットの女性は、焦ったような表情でそう言った。

「え、いや…。旅行客、って訳じゃ…」

「こっちに来てください。安全な場所に案内しますから」

え、ちょ。

俺達は…『アメノミコト』に潜入する為に…。

「シルナ、どうする?」

「えぇっと…。どうしよう…?」

まさか現地の人に、声をかけられるとは思ってなくて。

どうしたら、と思ったら。

「この人大丈夫だよ」

唐突に、ベリクリーデが言った。

…え?

「大丈夫だよ」

こんな、怪しさ満点の知らない人に話しかけられたと言うのに。

ベリクリーデは何故か、確信を持ってそう言った。

「…そうか。ベリクリーデがそう言うなら、大丈夫だ」

「ジュリス?」

「信用してくれ。こいつがこう言う時は、本当に大丈夫だから」

「…」

俺は、シルナと顔を見合わせた。

「こいつは勘だけで生きてるような奴だが、その勘だけは確かなんだよ」

とのこと。

「えへん」

「褒めてる訳じゃないからな」

…コントかな?

ともあれ…ベリクリーデが「大丈夫」だと言い、ジュリスも太鼓判を押すのだから。

信用して大丈夫だろう。

…それに、何かあったとしても、俺達みんなが揃ってるなら必ず切り抜けられる。

「…分かった。案内してくれるか?」

「はい。どうぞ、こちらに」

俺達は、ジャマ王国人の女性についていった。




…案内されたのは、数百メートル先の寂れたホステルだった。