神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

…それにしても。

「…随分と活気のない国だね、ジャマ王国って」

ジャマ王国に来るのが初めてのマシュリが、きょろきょろと街中を見渡しながら言った。

…そうだな。

俺も、ジャマ王国に来るのは初めてだ。

ここが、令月とすぐりの故郷…。

…こんなところだったんだな。

マシュリの言う通り、全然活気がない。

ルーデュニア聖王国の王都セレーナに比べると、その差は歴然だ。

本当にここは国の中心部なのか、と思うほど、閑散としていた。

建物はボロボロだし、人通りも少ないし、街中に雑草が茫々に生えている。

…何だか、不気味な雰囲気だな。

「ふんふん…。…野良猫の気配さえしないや。この国の猫は、何処に住んでるんだろう…」

マシュリは人間よりも、猫の心配をしていた。

…そういや、野良犬も野良猫もいないな。

全然姿を見かけない。

「らんららんら〜♪」

旅行気分で楽しそうなのは、ベリクリーデだけである。

「ベリクリーデ…。あのな、目立つから歌うな」

「ほぇ?」

「ほぇ、じゃなくてさ…」

…ジュリスも苦労してんな。

「エリュティアさんの調べてくれた情報によると、『アメノミコト』の本部はこの近くですね」

と、地図を見ながら言うイレース。

この近く…と言っても。

「…建物、ないぞ」

「…そう、だよね…?」

きょろきょろと、周囲を見渡すものの。

それらしき建物は見えない。

ボロボロに崩れた廃屋のような空き家や、壊れかけた倉庫みたいな建物があるだけ。

「病院や学校じゃないんですよ?暗殺組織の総本部なんですから、でかでかと看板が出てるはずないでしょう」

と、イレース。

あ、そっか…。

「じゃあ…まさかこれなのか?この空き家?」

「えっ、でも…。…勝手に入っちゃマズいんじゃ…?」

「アポがあっても、『アメノミコト』に潜入するなんてマズいだろ」

「あっ…。そ、そういえばそうだね…」

シルナ。俺達が不法入国者であることを忘れるな。

俺達は、こっそり忍び込んで、こっそり令月達を連れ戻しに来たんだぞ。

「…地下から、人の匂いがする」

鼻の良いマシュリが、地下を指差しながら言った。

やっぱり…入り口は地下なのか。

どうやって潜入するか、考えないとな。

「何とかして、入り口を…」

と、言いかけたその時。

「あなた達、ここで一体何してるんですか?」

「えっ?」

突然、誰かに声をかけられた。