神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

『玉響』さんは僕のもとに、10人程の魔導師を寄越した。

いずれも、まだ10代前半〜後半の、若い魔導師の卵。

しかし彼らは、イーニシュフェルト魔導学院の生徒達と同じ年頃とは思えなかった。

彼らは魔導師であり、そして暗殺者でもあった。

気さくに話しかけようとしても、全然返事をしてくれない。

彼らの話すことと言えば、「はい」とか、「いいえ」とか、「分かりました」とか。「出来ません」とか。それくらい。

雑談なんて、全然してくれないんですよ。

こんなんじゃ、教師としてのモチベーションも上がらないって言うか。

ロボットに教えてるような気がして。

でも、それも無理もないのかもしれない。

彼らは幼い頃から、暗殺者としての教育を受けてきた。

常に心を殺し、組織と鬼頭夜陰に忠誠を誓い、与えられた任務を忠実に遂行するだけの…暗殺者としての教育を。

そんな彼らに、普通の子供と同じような言動を求めても、それは不可能というもの。

…令月さんとすぐりさんも、昔はこんな感じだったんですかね?

あの二人の過去の姿を見ているようで、何だか気分が悪い。

ただでさえ、教え甲斐の乏しい生徒なのに。

その上、教えるのは読心魔法。

上手く行かないのも当然というもの。

教師として、こんなにつまらないことはない。

…それなのに。

「失礼します。ナジュさん」

「…うぇ…」

一人で、どよーんと沈んでいたところに。

追い打ちをかけるかのごとく、『玉響』さんがやって来た。

僕は、そんな『玉響』さんをじっと見つめた。

「…」

「…何ですか?」

「…いえ…別に…」

本当に、見れば見るほど『玉響』さんそのものだな、と思って。

クローンというのは、ここまでオリジナルとそっくりに作れるものなんですね。

兄弟や双子とは、訳が違う。

本当に、オリジナルとまったく同じ見た目。

だけど…その「中身」までは、どうなんでしょうね?

「…それより、何ですか。僕は今忙しいんです」

「何もしてないように見えますけど?」

…呼吸するのに忙しいんですよ。

「訓練の成果は、どうなっているかと思いまして」

「…」

「鬼頭様が、読心魔法の習得状態はどうか、と尋ねておられました。その後、どうですか?」

「…それは…」

まったく進んでないんですよね。一歩も。

これがもう、本当に、ほんの数センチどころか、1ミリも前に進んでない。

試験前に「私全然勉強してない!」とか言いながら、本当にまったく勉強してない人みたいに。

…とはいえ。

「残念でしたね。まったく進んでいません」

「…まったく?」

「えぇ。まったくです」

「…」

出来てもないことを「出来ました」と報告しても仕方がないので。

取り繕わず、僕ははっきりとそう伝えた。

…そもそも、これが当たり前なんですよ。

「…あなたが暗殺者じゃなくて、良かったですね」

『玉響』さんは、冷たい口調で答えた。

「はい?」

「与えられた任務を果たせない者は、この組織では生きていけません。あなたが暗殺者だったら、今頃不用品として処分されていましたよ」

へぇ。それはそれは。面白いじゃないですか。

不死身の僕をどうやって「処分」するのか、是非とも聞いてみたいですね。