神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

そうと決まれば、話は早い。

「よし。早速、出発の準備をしよう」

「そうだね。…シュニィちゃん」

「はい」

シルナは、シュニィの方を向いて頼んだ。

「私達がジャマ王国に行ってる間…学院をお願い出来るかな」

「…!学院長先生、私もお供します」

そう言うと思った。

だけど、シュニィ。お前は駄目だ。

シルナもイレースも出掛けるとなれば、他に学院のことを任せられるのは、シュニィくらいしかいない。

それに何より、家庭を持っているシュニィを、危険な目に遭わせたくなかった。

「お願いだよ、シュニィちゃん。私達の…令月君達の戻って来る場所を守って」

「…学院長先生…」

「そうしてくれ。俺からも頼むよ」

「…羽久さん…」

シュニィが学院を守ってくれてると思えば、俺達は安心して行ける。

「…分かりました」

ついに、シュニィは頷いてくれた。

「このイーニシュフェルト魔導学院は、私が守ります。お約束します」

「ありがとう、シュニィちゃん…」

「言っておきますが、生徒を過度に甘やかさないように頼みますよ」

と、釘を刺すことを忘れないイレースである。

おい。それはシュニィにはキツいって。

「うぐっ…。わ、分かりました…。努力はします…」

…可哀想に。

シュニィは優しいからな。自分に対しては厳しくても、他人に対して厳しく接することは出来ない。

「…これは、戻ってきたら、再び気を引き締める必要がありますね…」

イレースが、なんかぶつぶつ呟いてんだけど。

よし。聞こえなかったことにしよう。

…それじゃ。

「じゃあ、今回の遠征メンバーは、俺とシルナ、イレース、天音、マシュリの5人ってことで…」

「おいおい…。それはさすがに少ないんじゃないのか?」

「俺も同行しよう」

ジュリスと、無闇がそれぞれ言った。

「相手は暗殺者組織の総本部だろ。もっと戦力が必要なはずだ」

「だけど…。でも、人数を増やしたら、それだけ見つかる危険が…」

「どうせ潜入すれば見つかるだろうし、見つかることは前提で動いた方が良いぞ」

…ごもっとも。

「それから無闇、お前の魔法は強力だが、でも、潜入任務には向いてない」

と、ジュリスははっきりと、無闇にそう言った。

「えー。私と無闇君じゃ力になれないって言うの?」

無闇をディスられたと思ったのか。

すかさず、無闇の背後から、ふらり、と月読が姿を現した。

非常に不満げな表情である。

「そうじゃない。お前達が強いのはよく分かってる。だけど、適材適所ってものがあるんだ」

…ジュリスの言ってることが、分からなくはない。

無闇の使う魔法…『死火』の魔導書から放たれる魔法は、非常に強力である。

その強さと言ったら、無闇の持つ『死火』こそが「神殺しの魔法」なのではないかと伝えられたほど。

だけど、強力過ぎるが故に…どうしても、大味な魔法になりがちだ。

多対一の場面では負け知らずだが、『アメノミコト』の暗殺者は基本的に、群れるということをしない。

出会ったばかりの頃の、令月とすぐりを思い出してみれば良い。

今でこそ、あいつらは互いに組ませたら、手がつけられない始末だが。

まだ学院に来たばかりの頃は、まるで連携なんて取れてなかったし、むしろ足を引っ張り合っている有り様だった。

暗殺者達は、協力して戦うのが苦手だ。

だけら、無闇の得意な多対一の状況には、持って行きづらい。

もし戦うことになれば、それは多分、一対一の状況になるだろう。

そうなると…無闇にとっては、かなり不利な状況になる訳で。

だからこそ、ジュリスがこう言って、説得しているのだ。