神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

僕は必死にそう訴え、食い下がった。

読心魔法を他人に教えるなんて、あまりに危険だと。

しかし、僕の抵抗は。

「そこまで言うなら、『八千代』先輩と『八千歳』先輩の解放は、なかったことにしますが」

「っ…」

「それで良いんですか?」

…切り札を使ってきやがった。

あまりにも卑怯。卑怯ですよ。

言うことを聞かないなら、令月さんとすぐりさんをルーデュニア聖王国には返さない。

二人を返して欲しかったら、大人しく言うことを聞け…。

…最低。性格悪過ぎ。

僕より性格悪いですよ、この人。恥ずかしくないんですか。

しかも、『玉響』さんは。

「最低でも5人」

と、条件をつけてきた。

「最低でも5人に、読心魔法を伝授してください。『八千代』先輩と『八千歳』先輩をルーデュニア聖王国に返すのは、それからです」

「…!約束が違いますよ。今すぐに…」

「返すとは言いました。でも、今すぐとは言っていません」

聞きました?この酷過ぎる詭弁。

詐欺だ。

この人は暗殺者の上に、詐欺師ですよ。

「二人の身の安全を保障して欲しいなら、あなたも全力で、読心魔法を教えることです」

「…」

「それでは、後ほど候補生を連れてきます」

そう言って、『玉響』さんはお辞儀して。

そのまま、客室を出ていった。

「…はぁ」

僕は、その場にしゃがみ込んでしまった。

…何でこんなことになるのか。

僕はただ、令月さんとすぐりさんを助けたいだけなのに。 

このままじゃ、二人を助けるどころじゃない。

自ら足を踏み入れてしまった泥沼に、どんどん、ずぶずぶと嵌って落ちていくような気がした。