神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

まさかそう来るとは。

僕のことは信用出来ないけど、読心魔法は信用出来る。

だから、僕が読心魔法を使うのではなく。

『アメノミコト』の暗殺者に、読心魔法を教えること…。

まぁ、でも、理にかなってはいますよね。

僕一人が読心魔法を使うより、僕が読心魔法を大勢の人に教えて、読心魔法使いを増やす方が良い。

その方が、僕は引っ張りだこにならなくて済むし。

それに、元々敵側である僕の読心魔法より、配下の暗殺者の読心魔法の方が、遥かに信用出来る。

使い勝手も良いですしね。

だから、僕の役目は読心魔法を暗殺者達に指南すること…。

…その理屈は分かりますけど。

まさか、ジャマ王国に来てまで教師の仕事をやらされるとは。

聞いてませんよ。

「…あのですね…あなた…」

「あなたは元々ルーデュニア聖王国で教師をしているんだから、教えるのは得意でしょう」

そりゃ、人より多少は得意かもしれませんけど。

この人は、読心魔法のことを何か勘違いしている。

「ちょっと待ってくださいよ。読心魔法を教えるなんて、簡単に言わないでください」

僕がイーニシュフェルト魔導学院で担当しているのは、風魔法と実技魔法であって。

読心魔法の授業なんて、やってませんよ。

どうやって教えたら良いのか。

それに、何より。

「読心魔法というのは、誰にでも出来るものじゃありません。物凄く…人を選ぶ魔法なんです」

僕は幼い頃から、自然と読心魔法を使っていた。

誰かに教わった訳じゃなく、気がついたら出来るようになっていた。

だから、どうやって人に教えれば良いのか分からない。

教科書もないし、お手本だってどうやって見せれば良いのか分からない。

学院長曰く、僕の使う読心魔法は、物凄く特殊で、珍しい魔法なのだとか。

僕は生まれた時から自然と使えるようになっていたから、知らなかったが。

本来の読心魔法は、術者と被験者が互いに見つめ合って座り、じっと瞑想して、魔力を集中させ。

そしてようやく、被験者の心の片鱗が垣間見える…。

その程度の読心が精々で、僕みたいに、相手の目を見るだけで心の中が完全に読める…。

そんな「完成された」読心魔法は、これまで見たことがない、と。

学院長は、そう言っていた。

実際僕もこれまで、自分以外の読心魔法使いなんて、見たことも聞いたこともない。

羽久さんの使う時魔法以上に人を選ぶし、扱いが難しい魔法なのだそうだ。

そんな魔法を、簡単に「使えるように教えろ」なんて言わないでくださいよ。

いくら僕が教師だからって。

「それに、読心魔法は人に教えて良い魔法じゃないんですよ。魔導倫理規則で、指定危険魔法に選ばれて…」

「それはルーデュニア聖王国の規則でしょう?」

「…それはまぁ、そうですけど」

「なら、ジャマ王国には関係ないですね」

関係ない、ってことはないでしょうよ。

危険なんです。相手の心…精神を侵す魔法というのは。

僕自身、完璧に扱っているように思えた読心魔法が暴走して、酷い目に遭った経験がある。

ほら、調子に乗って10人くらい、同時に読心しようと、すぐりさんと一緒に訓練してた時。

色んな人に迷惑をかけてしまったので、正直、あまりあの時のことは思い出したくないですね。

慣れているはずの僕でさえ、ああなることがあるのに。

ずぶの素人相手に、どうやって読心魔法を教えれば良いのか。