しかし、僕は勘違いをしていた。
鬼頭夜陰は何も、まったくの赤の他人を『玉響』さんに仕立て上げた訳ではなかったのだ。
「あなたはきっと、僕が整形手術を受けて顔を変えたのだろう、と思っているんでしょう。でも、それは違います」
違う?
なら…もっと単純な手段だろうか。
「…じゃあ、幻覚魔法か何かですか」
あなたの身体に幻覚魔法をかけて、『玉響』さんに見せているだけですか。
「いいえ、違います」
「…なら何なんですか。あなたは」
「僕は『玉響』です。それも…正真正銘の、あなたが知っている『玉響』なんです」
だから、それは有り得ないって…。
「…こう言った方が分かりやすいかもしれませんね。正確に言うと…僕は、『玉響』のクローンなんです」
「…は?」
…突然、SF小説みたいなことを言い出した。
「『玉響』とまったく同じ遺伝子を持つ、彼のクローンなんです。…これで分かりましたか?」
分かりましたか、って。
そんな説明で、「へぇーそうなんですか」なんて、言えるはずがないでしょう。
「…正気ですか?」
あなたも、そして鬼頭夜陰も。
人間のクローンを…本気で、作り出すなんて。
たかが暗殺者組織が。
「…鬼頭様は、優秀な暗殺者を作り出すことに熱心になっておられました」
と、『クローン玉響』が説明し始めた。
「ですが、鬼頭様の眼鏡に適う暗殺者は、なかなか生まれるものではありません」
「…当たり前でしょう」
そんなもの、雨後の筍のようにぽんぽん生まれてたまるものか。
優秀な暗殺者なんて、一人も生まれる必要はないのだ。
「苦労して育て上げ、『終日組』に加入するほどの優秀な暗殺者に育っても…。それでも、まだ完璧ではない。かつての『玉響』や…そして、裏切り者の『八千代』と『八千歳』を見れば分かります」
…何ですか。その言い方は。
まるで、令月さんとすぐりさんを、欠陥品か何かのように。
「いくら優秀だ、完璧だと思っても、人間である限り、完全ではない」
「だから、それは当たり前のことです、人間はロボットじゃないんですから」
そのロボットだって、たまに誤作動を起こすのに。
人間は不完全な生き物であり、それがまた、人間という生き物の良いところでもあるのだ。
…しかし。
鬼頭夜陰が求めているのは、そんな人間らしさではない。
まさしくロボットのように、正確無比な動きをする「優秀な暗殺者」。
そこに感情は要らない。本人の意志など要らない。
ただ、命令に忠実であれば良い。与えられた命令を完璧にこなす存在であれば良い。
「鬼頭様は考えました。優秀な暗殺者を、安定的に育成する手段はないものかと」
「…だから、クローンを作ることにしたんですか?」
「そうです」
…正気の沙汰じゃない。
あの男は狂ってる。
それとも、暗殺者組織の頭目なんて、狂ってなきゃ出来ないということか。
だからって、クローンの錬成に手を出すなんて。
「これまでクローン作成については、先代、先々代の時代から議論はされていましたが、技術やコストの問題もあり、実際に行われたことはありませんでした」
行われなくて当然なんですよ。そんなことは。
研究室の中で、ネズミやブタのクローンを作るのとは訳が違う。
「しかし鬼頭様は、この半ば凍結されていた計画を、実行に移されました」
「…そして、生まれたのがあなた、ということですか」
「そうです。『終日組』の暗殺者は全員、ゲノムを採取され、『アメノミコト』の研究室に保管されています。そのゲノムを使って、クローン一号である僕が生まれました」
長々とありがとうございます。
つまりあなたは、人類が踏み出した叡智の第一歩、なんですね。
そして、決して踏み込んではいけない領域に入ってしまった、危険な一歩でもある。
鬼頭夜陰は何も、まったくの赤の他人を『玉響』さんに仕立て上げた訳ではなかったのだ。
「あなたはきっと、僕が整形手術を受けて顔を変えたのだろう、と思っているんでしょう。でも、それは違います」
違う?
なら…もっと単純な手段だろうか。
「…じゃあ、幻覚魔法か何かですか」
あなたの身体に幻覚魔法をかけて、『玉響』さんに見せているだけですか。
「いいえ、違います」
「…なら何なんですか。あなたは」
「僕は『玉響』です。それも…正真正銘の、あなたが知っている『玉響』なんです」
だから、それは有り得ないって…。
「…こう言った方が分かりやすいかもしれませんね。正確に言うと…僕は、『玉響』のクローンなんです」
「…は?」
…突然、SF小説みたいなことを言い出した。
「『玉響』とまったく同じ遺伝子を持つ、彼のクローンなんです。…これで分かりましたか?」
分かりましたか、って。
そんな説明で、「へぇーそうなんですか」なんて、言えるはずがないでしょう。
「…正気ですか?」
あなたも、そして鬼頭夜陰も。
人間のクローンを…本気で、作り出すなんて。
たかが暗殺者組織が。
「…鬼頭様は、優秀な暗殺者を作り出すことに熱心になっておられました」
と、『クローン玉響』が説明し始めた。
「ですが、鬼頭様の眼鏡に適う暗殺者は、なかなか生まれるものではありません」
「…当たり前でしょう」
そんなもの、雨後の筍のようにぽんぽん生まれてたまるものか。
優秀な暗殺者なんて、一人も生まれる必要はないのだ。
「苦労して育て上げ、『終日組』に加入するほどの優秀な暗殺者に育っても…。それでも、まだ完璧ではない。かつての『玉響』や…そして、裏切り者の『八千代』と『八千歳』を見れば分かります」
…何ですか。その言い方は。
まるで、令月さんとすぐりさんを、欠陥品か何かのように。
「いくら優秀だ、完璧だと思っても、人間である限り、完全ではない」
「だから、それは当たり前のことです、人間はロボットじゃないんですから」
そのロボットだって、たまに誤作動を起こすのに。
人間は不完全な生き物であり、それがまた、人間という生き物の良いところでもあるのだ。
…しかし。
鬼頭夜陰が求めているのは、そんな人間らしさではない。
まさしくロボットのように、正確無比な動きをする「優秀な暗殺者」。
そこに感情は要らない。本人の意志など要らない。
ただ、命令に忠実であれば良い。与えられた命令を完璧にこなす存在であれば良い。
「鬼頭様は考えました。優秀な暗殺者を、安定的に育成する手段はないものかと」
「…だから、クローンを作ることにしたんですか?」
「そうです」
…正気の沙汰じゃない。
あの男は狂ってる。
それとも、暗殺者組織の頭目なんて、狂ってなきゃ出来ないということか。
だからって、クローンの錬成に手を出すなんて。
「これまでクローン作成については、先代、先々代の時代から議論はされていましたが、技術やコストの問題もあり、実際に行われたことはありませんでした」
行われなくて当然なんですよ。そんなことは。
研究室の中で、ネズミやブタのクローンを作るのとは訳が違う。
「しかし鬼頭様は、この半ば凍結されていた計画を、実行に移されました」
「…そして、生まれたのがあなた、ということですか」
「そうです。『終日組』の暗殺者は全員、ゲノムを採取され、『アメノミコト』の研究室に保管されています。そのゲノムを使って、クローン一号である僕が生まれました」
長々とありがとうございます。
つまりあなたは、人類が踏み出した叡智の第一歩、なんですね。
そして、決して踏み込んではいけない領域に入ってしまった、危険な一歩でもある。


