―――――…一方、こちらは。

令月さんとすぐりさんを解放する…その代わりに、僕が『アメノミコト』に協力する。

という取引のもと、僕はようやく、暗がりの地下拷問室から出された。

長いこと拘束されっぱなしだったので、自分の足で立つのは久し振りですね。

拷問のせいか、それとも身体がなまっているせいか、足元がふらつきますよ。

何年かぶりに、シャバに出た気分。

…とはいえ、ここも『アメノミコト』の建物の中なんですけどね。

「こちらへ」

「はぁ、どうも…」

さっきまで、僕に酷い拷問を加えていたはずの拷問官が。

客間らしき部屋に、僕を案内してくれた。

部屋の中に入って、ぐるりと室内を見渡す。

家具は質素だけれど、普通の部屋だ。

ソファもテーブルもあるし、奥にはベッドもあるようだ。

ちょっとしたビジネスホテルみたいな…。

さっきまで閉じ込められていた、地下拷問室と比べれば…まさに天国と地獄。

…ここ、まさか新しい拷問室じゃないですよね?

おっと、いけない…。まだ拷問気分が抜けていないようですね。

…拷問気分って何ですか。

部屋に入った僕は、恐る恐るソファに座ってみた。

実はこれ電気椅子でした、みたいなオチだったら、僕は今頃ビリビリしていただろう。

だが、全然ビリビリしないので、どうやら電気椅子ではなさそう。

ほっ。

まぁ、拷問を続行するつもりなら、そもそも地下拷問室から出したりしませんよね。

ということは、本当に拷問は終わった…と、思って良いんですよね。

そして、今度は…『アメノミコト』に協力するという、新たな「拷問」の始まりでもある。