大変お花畑な、僕の精神世界だったが…。
「…起きろ」
突然、頭のてっぺんからバシャッ、と冷水をぶち撒けられ。
楽園のような精神世界から、地獄のような現実に引き戻された。
目を覚ますと、そこには、黒子のように顔を隠した拷問官が。
『アメノミコト』の拷問官はこうして、僕に心の中を読まれないよう、顔を隠しているのだ。
相手の目を見ないと読心出来ない、という僕の読心魔法の欠点を知っているから。
…まったく小賢しい人達。
今、凄く良いところだったんですけどね…。
突然起こされて、僕はちょっと不機嫌ですよ。
起きろ、そろそろ今日の拷問の時間だ、ってことだろうか。
「…今度は何ですか?」
と、わざわざ聞くまでもなかった。
さっきから、鼻を焦がすような、鉄の焼ける熱い匂いが漂っているから。
棍棒みたいに太くて長い鉄の棒の先を、真っ赤になるまで充分に熱してから。
それを、僕に向かって振り上げった。
あぁ、成程。
僕は、次の瞬間に襲ってくるであろう激しい痛みに備えた。
ジュッ、と肉が焼ける音がして。
鉄の棒を当ててられた脇腹が、抉れるような痛みを発した。
同時に、肉が焦げたような匂いが漂ってきた。
…まったく、人間炙り肉ですか。
嫌な趣味してますよ。
拷問官は淡々と、もう一度鉄棒を炙り。
真っ赤になったそれを、続けて僕の身体に押し付けてきた。
悲鳴を上げないよう、声を出さないよう、口の中を噛み締めるようにして耐えた。
一般人なら、この時点で泣き叫んで失神してますよ。
「…大したものだな。声の一つもあげないとは」
熟練の拷問官に褒められるとは、身に余る光栄ですね。
「死に慣れてますからね…。例え首を切り落とされても、僕は屈しませんよ」
僕は、拷問官にそう言い返した。
「こんなことを、いつまで続けてても無駄です…。無駄な労力ですよ」
「…」
別に、焼きごてをやめて欲しいから、頼んでる訳じゃないですよ。
本当に無駄だから、そう言ってるんです。
「僕は死にません。そして屈しません。仲間を守る為に…」
「そうか。ならば、やり方を変えよう」
はい?
焼きごてで駄目なら、今度は何ですか。
逆さに吊るしますか。それとも水槽の中に閉じ込めます?
しかし、拷問官が言いたいのはそういうことではなかった。
「いつまでも強情を張る貴様に、頭領様も頭を痛めていらっしゃる」
「はぁ…そうですか。それは光栄ですね…」
あの人の頭痛を誘う為なら、あと何ヶ月、何年だって耐えますよ。
「そこで、やり方を変えることにした」
「今度は何をするんですか?」
「お前には、何もしない」
…え。
「…どういう意味です?」
「黒月令月と、花曇すぐりを知っているな?」
僕は思わず、身体を硬直させてしまった。
これまで一度も、拷問の最中に、あの二人の名前を聞いたことはなかった。
「…当たり前じゃないですか」
仲間なんだから。
「あの二人は、今、『アメノミコト』に戻ってきている」
「…」
予想していたこととは言え、『アメノミコト』の人間の口から、はっきりとそう聞かされると。
…思わず、縛られている拳を強く握り締めた。
…やっぱり、そうだったんですね。
「…起きろ」
突然、頭のてっぺんからバシャッ、と冷水をぶち撒けられ。
楽園のような精神世界から、地獄のような現実に引き戻された。
目を覚ますと、そこには、黒子のように顔を隠した拷問官が。
『アメノミコト』の拷問官はこうして、僕に心の中を読まれないよう、顔を隠しているのだ。
相手の目を見ないと読心出来ない、という僕の読心魔法の欠点を知っているから。
…まったく小賢しい人達。
今、凄く良いところだったんですけどね…。
突然起こされて、僕はちょっと不機嫌ですよ。
起きろ、そろそろ今日の拷問の時間だ、ってことだろうか。
「…今度は何ですか?」
と、わざわざ聞くまでもなかった。
さっきから、鼻を焦がすような、鉄の焼ける熱い匂いが漂っているから。
棍棒みたいに太くて長い鉄の棒の先を、真っ赤になるまで充分に熱してから。
それを、僕に向かって振り上げった。
あぁ、成程。
僕は、次の瞬間に襲ってくるであろう激しい痛みに備えた。
ジュッ、と肉が焼ける音がして。
鉄の棒を当ててられた脇腹が、抉れるような痛みを発した。
同時に、肉が焦げたような匂いが漂ってきた。
…まったく、人間炙り肉ですか。
嫌な趣味してますよ。
拷問官は淡々と、もう一度鉄棒を炙り。
真っ赤になったそれを、続けて僕の身体に押し付けてきた。
悲鳴を上げないよう、声を出さないよう、口の中を噛み締めるようにして耐えた。
一般人なら、この時点で泣き叫んで失神してますよ。
「…大したものだな。声の一つもあげないとは」
熟練の拷問官に褒められるとは、身に余る光栄ですね。
「死に慣れてますからね…。例え首を切り落とされても、僕は屈しませんよ」
僕は、拷問官にそう言い返した。
「こんなことを、いつまで続けてても無駄です…。無駄な労力ですよ」
「…」
別に、焼きごてをやめて欲しいから、頼んでる訳じゃないですよ。
本当に無駄だから、そう言ってるんです。
「僕は死にません。そして屈しません。仲間を守る為に…」
「そうか。ならば、やり方を変えよう」
はい?
焼きごてで駄目なら、今度は何ですか。
逆さに吊るしますか。それとも水槽の中に閉じ込めます?
しかし、拷問官が言いたいのはそういうことではなかった。
「いつまでも強情を張る貴様に、頭領様も頭を痛めていらっしゃる」
「はぁ…そうですか。それは光栄ですね…」
あの人の頭痛を誘う為なら、あと何ヶ月、何年だって耐えますよ。
「そこで、やり方を変えることにした」
「今度は何をするんですか?」
「お前には、何もしない」
…え。
「…どういう意味です?」
「黒月令月と、花曇すぐりを知っているな?」
僕は思わず、身体を硬直させてしまった。
これまで一度も、拷問の最中に、あの二人の名前を聞いたことはなかった。
「…当たり前じゃないですか」
仲間なんだから。
「あの二人は、今、『アメノミコト』に戻ってきている」
「…」
予想していたこととは言え、『アメノミコト』の人間の口から、はっきりとそう聞かされると。
…思わず、縛られている拳を強く握り締めた。
…やっぱり、そうだったんですね。


