神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

ちなみに、その翌日。

俺の筋肉痛は、一晩経って随分マシになったのだが…。

それにしても気になるのは、同じように収穫作業をしたはずなのに。

何故俺だけ筋肉痛に苦しみ、シルナは無事だったのか。

その答えは、収穫をした翌々日に分かった。

昨日よりは軽い足取りで、学院長室に向かうと。

「…?何やってんだ?シルナ…」

「…うぎゅう〜…」

シルナは、さながらトドみたいにソファに横たわって、奇怪な声を出すシルナ。

…何だかぐったりしてるみたいだけど、どうしたんだ。

すると、俺の後ろから。

「失礼しますよ、学院長」

「あ、イレース…」

イレースがやって来て、ソファに寝そべっているシルナをじっ、と見つめた。

「…何やってるんです、このパンダは」

「さぁ…?」

「今日は月曜日ですよ。今日から一週間が始まるんです。月曜の朝から何をダラダラしてるんです」

まだ休日気分が抜けてないのか、とイライラ。

まぁ…イレースは、休日だろうと平日だろうと、常にテキパキ動いてるけどな…。

すると、シルナは。

「駄目なんだ…。…無理なんだよ…」

掠れた声で、そう答えた。

は?

「何言ってるんです」

「今日…今日、私、授業休んでも良い?」

えっ…?

「…本当にどうしたんだよ?シルナ…」

「…」

押し黙るシルナ。

…何故黙る?

「おい、シルナ。起き…」

「いたっ!あ痛たたた…」

「…」

ソファの上で、僅かに身動ぎしたシルナが、痛みを訴えた。

ロボットみたいな、カクカクの動き。

この挙動…。俺にも覚えがあるぞ。

それはさながら、昨日、筋肉痛に苦しんでいた俺と同じ…。

「…シルナ、お前まさか…筋肉痛か?」

「ぎくっ!」

…やはり。

おかしいと思ってたんだよ。昨日。

運動不足パンダであるシルナが、突然農作業なんかして、まったく筋肉痛に苦しんでない、なんて。

シルナは昨日、「チョコレートのお陰で、自分は健康体」だと自慢げに語っていたが…。

何のことはない。

…年寄りだから、筋肉痛が襲ってくるのが遅かっただけだ。

シルナがちゃんと運動不足の老人で、俺は安心したよ。

運動不足は俺だけじゃなかった。

しかしシルナは、昨日あれほど自慢げに「自分は元気」と主張してしまったこともあり。

「な…なんのこと?私、別に、き、筋肉痛なんかじゃ…」

この期に及んで、否定しようとしてるぞ。

「…」

「な、何?羽久。なにっ?」

俺は無言でシルナに近づき、その腕をガシッ、と掴んだ。

そして、掴んだ腕をぐい〜っと伸ばしてやった。

すると、シルナは甲高い間抜けな声を上げた。

「ぴゃぁぁぁっ!痛いよーっ!」

「やっぱり筋肉痛じゃないか」

「ち、ちがっ…違うんだよ、羽久!」

何が違うんだよ。

別に筋肉痛だって、恥ずかしいことではないだろ。

「こ、これは…そう、身体が糖分を欲してる証なんだ。今日一日ゆっくり休んで、チョコをいっぱい食べたら元気に…」

などと供述しており。

「下らない。筋肉痛ごときで授業を休もうなど、断じて許されることではありません」

我が校の鬼教師イレースが、ばっさりと言い放った。

その通り。よく言ったイレース。