神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

な、なんだ?そのタッパー…。

「どうしたの?ツキナちゃん。今日は授業はお休み…」

慌てて立ち上がるシルナ。

「そうなんですけど、昨日、大根をいっぱい収穫したので…。お料理してきたんです!」

えっ?

「収穫を手伝ってくれた学院長先生と、羽久先生にもお裾分けです!」

そう言って。

ツキナは、たくさんのタッパーを持って部屋に入ってきた。

ドサッ、とテーブルの上にタッパーを置く。

「一人じゃ食べ切れないので。お二人もどうぞ!」

「ツキナ…お前…」

昨日、収穫したばかりだと言うのに。

今度は、採れたて新鮮なうちに、朝から大根料理を作ってきたのか。

めちゃくちゃ元気じゃないか。

「ツキナは…身体、痛くないのか…?」

「へ?痛い?何処がですか?」

「あ、いや…。何でもない…」

普段から、園芸部の畑で重労働の畑仕事をこなしているツキナにとっては。

筋肉痛なんて、まったく無縁に違いない。

良いなぁ、若いって…羨ましい。

なんて言い出したら、歳を感じるよな…。

俺より年上なのに、全然筋肉痛になってないシルナは何なんだ。

なんかズルくね?

「はいっ、どうぞ。これらは全部お二人に差し上げるので、たくさん食べてくださいね〜!」

「あ、ありがとう…ツキナ…」

「それじゃ、私は畑の手入れをしてきますね!」

ツキナは軽快な足取りで、颯爽と学院長室を出ていった。

…昨日、あんなによく働いたのに…。日曜日でも関係なく部活をするのか。

畑仕事に休みはないと言うが、あれは本当なんだな…。

…それで、大量のタッパーがテーブルの上に残された訳だが。

「…折角だし、食べるか」

「そうだね」

シルナは、普段甘いものばっかり食べ過ぎだからな。

たまにはチョコ以外のものを食べろ。

ましてや、自分の手で収穫したものなんて最高じゃないか。

しかも、生徒に作ってもらったんだぞ?

言ってくれれば、俺達も手伝いに行ったのに。

えぇと、それじゃあまず、このひときわ大きなタッパーから。

開けてみると、出てきたのは美味しそうなふろふき大根。

大根料理と言えば、やっぱりこれだよな。

甘じょっぱい味噌ダレがたっぷりかかっていて、とても美味しそうだ。

それから…こっちのタッパーに入ってるのは…ブリ大根のようだ。

これも定番だな。

以前、ナジュも大根料理をたくさん振る舞ってくれたが、あれに勝るとも劣らない。

それに…。

「おっ…これ糠漬けだぞ、シルナ」

「あ、本当だ。あれ美味しかったよねぇ」

園芸部自家製の、大根の糠漬け。

キルディリア魔王国に幽閉されていた時、この大根の糠漬けに、どれほど心を慰められたか。

たかが糠漬け、って思うだろ?

されど糠漬けなんだよ。

他にも、鶏大根、大根ステーキ、大根なます、大根サラダ、大根のきんぴら、などなど。

多種多様な大根の料理の数々が。

「凄いな…。これ、作るの大変だったろうに…」

「そ、そうだね…。何だか悪いことしちゃったな…」

「あぁ…。…また手伝いに行かないとな…」

大根狩りの報酬にしちゃ、豪華過ぎるぞ。

有り難く頂きます。