神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

そんな感じで、立て続けに三本くらい、大根抜きをしていたのだが。

「…なんか違う」

ツキナが、突然手を止めた。

「な、何だ?」

「掛け声…掛け声が足りない」

か、掛け声?

「いつもすぐり君達と一緒に収穫する時は、よっこいしょー、って言うんです」

と、ツキナが説明してくれた。

よっこいしょ…?

「…別に…言えば…?」

どうぞ、お好きに…。

まぁ、あんまり野菜を収穫しながら、よっこいしょーは言わないかもしれないけど。

掛け声は自由なのでは?

ここ、ツキナの畑なんだし。

しかし、ツキナが言ってるのはそういうことではなかった。

「私がよっこいしょーって言ったら、すぐり君と令月君も、続いてよっこいしょー、って言いながら収穫するんです」

えっ。

…いつもお前ら、そんなことしてたの?

収穫って、そんな騒がしくやるものだっけ?

「そ、それ…やらないと駄目なのか?」

「はい!」

…駄目らしい。

「じゃあ行きますよ!…よっこいしょー!」

と言いながら、大根を抜くツキナ。

よ、よく分からないけど…よっこいしょ、って言えば良いのか?

「よ…よっこいしょ」

「声が小さい!」

怒られた。

教師なのに。

「よ…よっこいしょー!」

これ、結構恥ずかしいんだけど?

「ほら、学院長先生も!」

「えっ、わ、私も?えぇっと…よっこいしょー…」

「もっとお腹から声を出して!」

「えぇっ。そ、そんな…。よ、よっこいしょーっ!」

ツキナ、勘弁してやれ。そいつは老体だ。

「はい、次ー!どっこいしょー!」

掛け声をあげながら、勢い良く大根を抜くツキナ。

こ、これも言わなきゃいけないのか?

「ど…どっこいしょー!」

俺は、ツキナに続いて大声を上げた。

シルナも、必死に。

「ど、どっこいしょっ!」

頑張って声を出していた。上擦ってるけど。

しかし、ツキナは容赦ない。

「まだまだ!ほっこいしょー!」

ほっこいしょ!?

「ほ!?ほ…ほっこいしょっー!」

「ほっこいしょっ…!」

「お腹から出してー!やっこいしょー!」

やっこいしょ!?

「や…やっこいしょ…?」

「やっこいしょーっ!」

シルナの声が、そろそろ枯れ始めた。

カラオケで真っ先に潰れるタイプ。

「そーれ、なっこいしょー!」

なっこいしょ!?

「な…な、なっこいしょ…」

「なっこい…しょーっ…!」

「まだ行くよー!まっこいしょー!」

まっこいしょ!?

…段々めちゃくちゃになってきた。




こんな調子で俺達は、校舎裏の畑で、奇声をあげながら。

ひたすら、心を無にして大根の収穫に精を出したのであった。