神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

大根の収穫って言っても、精々4、5本くらいが関の山だと思っていた。

家庭菜園の大根作りなんだから、それくらいが限度だろうと。

だけど、実際はそんなに甘っちょろいものではなく…。

…これ、俺とシルナで収穫、可能なのか?

「…」

「…」

俺とシルナは、互いに青い顔を見合わせたが…。

そんな俺達には、まったく気づくことなく。ツキナは。

「それじゃ、早速始めましょうか。よっこいしょー!」

元気の良い掛け声と共に、ツキナは畑にしゃがんで、大根を勢い良く引き抜いた。

お店で売っている大根と見紛うほど、いや、それよりも立派な…巨大な大根が、地面から現れた。

でかっ…。

「ほら、学院長先生と羽久先生も」

「えっ…」

…やっぱやらなきゃいけないよな?ここまで来たら。

今更、「やっぱりやめておくよ」とは言えないよな。

…仕方がない。腹をくくれ。

令月とすぐりがいないんだ。俺達じゃ代わりにはなれないけど、せめて手を貸すくらいは。

「よしっ…やるぞ」

俺は畑にしゃがみ込み、青々とした大根の葉っぱを掴んだ。

「よっ…。あっ…あれ?」

すぽん、と簡単に抜けるものだと思っていたら。

土の中で大根がちょっと動いただけで、全然抜けなかった。

「あぁっ!無理矢理引っこ抜こうとしちゃ駄目ですよ!」

「えっ?」

「まずはこうして、畑の中でぐりぐり〜ってして…」

ツキナが、お手本を見せてくれた。

土の中で、大根を前後左右に、軽く揺する。

そうして、大根の穴を広げてから。

「こうして…真上に、垂直に引っこ抜きます。…どっこいしょー!」

ツキナがやると、軽々と収穫出来る、

…さすが、園芸部の部長。

「こんな感じです!」

「な、成程…」

大根の収穫も、そんなに簡単じゃないんだな…。

よし、それじゃ俺も、ツキナを見習って…。

「よっ…と」

おぉ、抜けた抜けた。やれば出来るもんだ。

でっかい大根だな、しかし。凄い質量だ。

「ほら、シルナもやってみろ」

「わ、私っ?」

「そこで棒立ちしてる訳にはいかないだろ」

「そ、そうだよね。よし…!」

シルナも、いざ大根抜きに挑戦。

「ふんっ…ふんっ…。う〜」

俺以上のへっぴり腰。

何だろう。同じことをやってるはずなのに。

ツキナが大根を抜いてると可愛らしいのに。

シルナがやってると、畑に現れた大根泥棒みたいだな。

「羽久がっ…私に、失礼なこと考えてる気がする〜っ!」

良いから、腰を入れて大根を抜け。

「はぁはぁ…。見て羽久。大根って、意外と重いんだね…」

ようやく、一本の大根を抜いたシルナ。

分かる。結構ずっしり来るよな。

老体にはキツイか。

「腰が痛くなりそう…」

「一本で音を上げてどうする。まだまだあるんだぞ」

「うっ…。が、頑張るよ…」

「頑張ろー!」

うっきうきのツキナ。

…よし、やるぞ。

ツキナの、この笑顔を守る為にも。