神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

ツキナの案内で、校舎の裏にやって来る。

ここに園芸部の畑が、

「あそこです!」

「えっ…!?」

俺は、思わず足が止まってしまった。

「…?羽久先生、どうしたんですか?」

「え…い、いや…」

…広くね?

なんか、めっちゃ畑…。…広くね?

イーニシュフェルト魔導学院の園芸部の畑って…こんなに広かったっけ?

「…?…??」

ほら、シルナも我が目を疑っている。

園芸部創立時は、もっと小さくて…ささやかな家庭菜園、程度の規模だったはずだ。

それが、今や…。

…多分、創立時の10倍以上の広さに、畑が拡張されている。

い…いつの間に…?

「これ…こんなに…畑、広かったっけ?」

「開墾しました!」

えへん、と胸を張るツキナ。

…開墾?

「…いつの間に?」

「え?すぐり君達が入部してから」

あいつらか。

「そんな…。た、大変だったでしょう…?」

と、尋ねるシルナの声が上ずっていた。

そりゃそうだ。

学院の土地は、当然だが農業用ではない。

「開墾した」と簡単に言ってしまえばそれまでだが、この大きさまで広げようと思ったら。

そこには、大変な苦労があったはずだ。

俺は、園芸について全然詳しくないから、具体的にどんな苦労があったのかは、推測するしかないが…。

土地を耕して、土を入れ替えて、畝を作って肥料を混ぜて…等々。

素人でも、このくらいは簡単に思いつく。

実際に畑を開墾したツキナ達には、他にも、もっとたくさんの課題に直面したはずだ。

それなのに…。

「すぐり君と令月君がやってくれました!」

…とのこと。

…あいつら…俺達が見てない間に、何やってんの…?

元暗殺者組が、鍬を振るって土を耕している姿を想像し。

あいつらならやりかねん、と思ってしまった自分がいる。

「つーか、あいつら…仮にも学院の土地を…無許可で…」

「?ナジュ先生が、『良いよ』って言ってくれましたよ?」

え?

「『畑大きくして良いですか?』って聞いたら、『あ、良いですよ。どうぞどうぞ』って」

ツキナが、満面の笑顔で教えてくれた。

…ナジュ…お前…。

このことが後でイレースにバレて、黒焦げにされても知らないからな。

これはもう、園芸部の畑の規模じゃない。

趣味の域を軽く超えている。

農家だよ。ちょっとした農家。

「見てください、この土!ふっかふかでしょう?」

ツキナは地面にしゃがみ込み、畑の土を手のひらに取って、自慢げに見せてくれた。

「すぐり君達が、農家で米ぬかをもらってきて…それから、土に混ぜる腐葉土も自作なんです!」

「へ、へぇ〜…」

「栄養たっぷりの土なんですよ!だから、ほらっ…大根もいっぱい出来てるでしょう?」

めっちゃ饒舌に喋り始めたツキナ。

確かに畑には、青々とした葉っぱをつけた大根が、たくさん出来ていた。

凄いな…。本格的…。

ここ、本当に魔導学院だよな…?

まさか世間の皆さんも、天下のイーニシュフェルト魔導学院に、ここまで本格的な、立派な広い畑があるとは思ってないだろうなぁ…。