神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「…何だよ、いきなり…」

突然大声を出すなよ。

麦チョコが器官にでも入ったか?

「一番大変な思いをしてるのは令月君達なのに、私がいつまでもへこんでちゃ駄目だ!」

「…あ、そう」

…としか言いようがないんだが。

何やら思い立ったらしいが、だからって突然デカい声を出すのはやめてくれよ。

「元気を出そう!羽久、一緒に元気を出そうよ!」

「はぁ…」

でも、元気って…そんな、蛇口を捻って簡単に出てくるようなものじゃないだろ。

「景気づけに…チョコでも食べよう!」

いや、今、既に食べてたじゃん。麦チョコ。

つーか、お前元気な時でも元気じゃない時でも、いつもチョコ食べてるじゃないか。

今に始まったことではない。

「こういう時こそ、美味しいものを食べて元気を出さないとね!」

「毎日食べてるけどな。お前は」

「そうだ!楽しみに取っておいた、秘蔵のチョコマドレーヌがあるんだよ。今、出すからね〜」

聞いてねぇし。俺の話。

シルナはうきうきと、戸棚を漁り始めた。

…まぁ、何にせよ。

空元気だとしても、ちょっとでもシルナが元気になってくれたのは、俺も嬉しい。

「あった!よーし、羽久。一緒に食べよう!」

「はいはい」

「それから、イレースちゃんと天音君にも食べてもらおう。美味しいチョコマドレーヌを食べたら、きっと元気になるよ!」

「はいはい…」

誰もがお前みたいに、頭の中までチョコたっぷりの単純思考だったら、話は楽なんだけどな。

多分天音は、チョコマドレーヌくらいじゃ元気にはならないと思うぞ。

「羽久が私に失礼なことを考えてる気がする…」

「そんなことより、天音を呼ぶなら早く…」

と、俺が言いかけた、その時だった。

学院長室の扉を突き破るかのごとく、凄まじい勢いで。

女子生徒が一人、泣きじゃくりながら入ってきた。

「うわーん!だいこん〜っ!!」

…と、叫びながら。