こん、こん、ころん、と。
ターゲットの首が、ボールのように床に落ちて、2、3回転がった。
首の「断面」から、噴水のように血が噴き出した。
「え…。ま、ママ…?」
母親の返り血を、べったりと浴びた少女は。
首をなくした母親を、不思議そうに見つめ。
それから。
ぷしゅっ、と音がして、その娘の首も切断された。
「…!!」
止める暇もない早業だった。
少女が抱いていたウサギのぬいぐるみが、血で真っ赤に染まっている。
ついさっきまで、確かに生きていた二人の人間が。
あっという間に、命を奪われた瞬間だった。
そして、二人の命を奪った犯人は…。
「こんばんは、先輩」
「…!!お前…!」
今しがた、俺が入ってきたアパートの窓のところに。
黒装束に、黒いフードを深く被って顔を隠している暗殺者がいた。
「遅れてすみませんでした。ついさっきまで、別の仕事が立て込んでいたもので…」
その口調は、楽しげでさえあった。
「なんで、ここに…!」
「鬼頭様のご命令です。『八千歳』先輩の任務を手伝うように、と」
鬼頭だって。
あの男…どうして、他の暗殺者に、仕事を手伝えなんて。
すぐに分かった。
この人は手伝いなんかじゃない。俺の仕事ぶりを見張る為に遣わせたのだ。
「僭越ながら、お手伝いさせていただきました。…必要なかったですか?」
…こいつ。いけしゃあしゃあと。
「何で殺したの?」
「はい?」
「殺す必要なんてなかった。俺を見張ってたなら、君だって分かってるでしょ」
この人は麻薬中毒者ではないし、違法な薬の売買もやってない。
過去には何度か、そういうことに手を染めた経験もあるけれど。
娘が生まれてからは、やってないと言っていた。
その言葉に嘘がないことくらい、分かっているだろうに…!
「…おかしなことを言いますね、先輩」
「は?」
「殺されるべきか否かなんて、そんなこと、暗殺者が考える必要はないでしょう?」
「…」
…それは。
「暗殺者は、指定されたターゲットを殺すだけ。その理由なんて知る必要はない。相手が無実か否かなんてどうでも良い。そうでしょう?」
「…」
「後輩に講釈させないでくださいよ」
…クソ生意気な後輩だねー、君。
めちゃくちゃ腹が立ってきたよ。
こんな奴に、先輩呼ばわりされるいわれはない。
「先輩がターゲットとお喋りを始めた時は、驚きましたよ。先輩なら、ターゲットが眠ってる間に仕事を済ませるものだと思っていたのに…」
…俺だって、最初はそのつもりだったよ。
だけど…。
「てっきり、命乞いを聞いたフリをして、ターゲットを油断させてから確実に殺す、という作戦かと思ったんですが」
「…」
「まさか、本気で見逃すつもりだったんですか?」
「…うん。そーだよ」
隠したってしょうがない。
俺は、正直に告白した。
「この人はもう薬の売人じゃない。なら、殺す必要はなかった」
「考えが甘いですね。今、やってないからって、これからもしないとは限らないでしょうに」
「馬鹿だねー、君。『これから悪いことをするかもしれない』なんて理由で人を殺してたら、ジャマ王国には国民なんて一人もいなくなるよ」
「あぁ…。確かに」
誰しも、悪いことをする可能性はある。
未来のことなんて誰にも分からないのだから。
「でも、それは暗殺者である我々が考えることではないので。我々の役目は、鬼頭様の命令に従って、殺せと言われた相手を殺すだけ」
「…」
「そうじゃありませんか?」
「…そーだね」
認めるよ。君の言う通りだ。
それが、暗殺者の役目。
頭領である鬼頭夜陰の命令に従う。『アメノミコト』の暗殺者の鑑…。
「…クソ喰らえだ、そんなの」
俺は、そう吐き捨てた。
ターゲットの首が、ボールのように床に落ちて、2、3回転がった。
首の「断面」から、噴水のように血が噴き出した。
「え…。ま、ママ…?」
母親の返り血を、べったりと浴びた少女は。
首をなくした母親を、不思議そうに見つめ。
それから。
ぷしゅっ、と音がして、その娘の首も切断された。
「…!!」
止める暇もない早業だった。
少女が抱いていたウサギのぬいぐるみが、血で真っ赤に染まっている。
ついさっきまで、確かに生きていた二人の人間が。
あっという間に、命を奪われた瞬間だった。
そして、二人の命を奪った犯人は…。
「こんばんは、先輩」
「…!!お前…!」
今しがた、俺が入ってきたアパートの窓のところに。
黒装束に、黒いフードを深く被って顔を隠している暗殺者がいた。
「遅れてすみませんでした。ついさっきまで、別の仕事が立て込んでいたもので…」
その口調は、楽しげでさえあった。
「なんで、ここに…!」
「鬼頭様のご命令です。『八千歳』先輩の任務を手伝うように、と」
鬼頭だって。
あの男…どうして、他の暗殺者に、仕事を手伝えなんて。
すぐに分かった。
この人は手伝いなんかじゃない。俺の仕事ぶりを見張る為に遣わせたのだ。
「僭越ながら、お手伝いさせていただきました。…必要なかったですか?」
…こいつ。いけしゃあしゃあと。
「何で殺したの?」
「はい?」
「殺す必要なんてなかった。俺を見張ってたなら、君だって分かってるでしょ」
この人は麻薬中毒者ではないし、違法な薬の売買もやってない。
過去には何度か、そういうことに手を染めた経験もあるけれど。
娘が生まれてからは、やってないと言っていた。
その言葉に嘘がないことくらい、分かっているだろうに…!
「…おかしなことを言いますね、先輩」
「は?」
「殺されるべきか否かなんて、そんなこと、暗殺者が考える必要はないでしょう?」
「…」
…それは。
「暗殺者は、指定されたターゲットを殺すだけ。その理由なんて知る必要はない。相手が無実か否かなんてどうでも良い。そうでしょう?」
「…」
「後輩に講釈させないでくださいよ」
…クソ生意気な後輩だねー、君。
めちゃくちゃ腹が立ってきたよ。
こんな奴に、先輩呼ばわりされるいわれはない。
「先輩がターゲットとお喋りを始めた時は、驚きましたよ。先輩なら、ターゲットが眠ってる間に仕事を済ませるものだと思っていたのに…」
…俺だって、最初はそのつもりだったよ。
だけど…。
「てっきり、命乞いを聞いたフリをして、ターゲットを油断させてから確実に殺す、という作戦かと思ったんですが」
「…」
「まさか、本気で見逃すつもりだったんですか?」
「…うん。そーだよ」
隠したってしょうがない。
俺は、正直に告白した。
「この人はもう薬の売人じゃない。なら、殺す必要はなかった」
「考えが甘いですね。今、やってないからって、これからもしないとは限らないでしょうに」
「馬鹿だねー、君。『これから悪いことをするかもしれない』なんて理由で人を殺してたら、ジャマ王国には国民なんて一人もいなくなるよ」
「あぁ…。確かに」
誰しも、悪いことをする可能性はある。
未来のことなんて誰にも分からないのだから。
「でも、それは暗殺者である我々が考えることではないので。我々の役目は、鬼頭様の命令に従って、殺せと言われた相手を殺すだけ」
「…」
「そうじゃありませんか?」
「…そーだね」
認めるよ。君の言う通りだ。
それが、暗殺者の役目。
頭領である鬼頭夜陰の命令に従う。『アメノミコト』の暗殺者の鑑…。
「…クソ喰らえだ、そんなの」
俺は、そう吐き捨てた。


