しまった。
こんな下らないミスをするのも、やはり初めてだった。
「ひっ…!?」
暗闇の中に、俺の姿を見つけたのだろう。
ターゲットはびっくりして、慌てて逃げ出す…。
…のではなく。
彼女はまず真っ先に、傍らで眠っていた娘を抱き締めた。
庇うように。守ろうとするように。
せめて娘だけは、と。
俺にとっては予想外の行動で、俺の方が面食らってしまった。
「やめて…。この子には何もしないで…!」
…なんで?
自分の身は守らなくて良いの?なんで、まず真っ先に自分の子を…。
その時、俺は気づいた。
この人にとっては、自分の命より娘の命の方が大事なんだ。
咄嗟に抱き締めて守ろうとしたのが、その何よりの証拠。
…分かるよ。
俺にもあるから。…自分の命より大切な命が。
やだよね。奪われたら。
「…ねぇ、君」
「やめて…!来ないで…!」
俺、一歩も動いてないよ。
「君、薬を売買してたってほんと?」
「えっ?」
今度は、ターゲットがびっくりする番だった。
「外国から勝手に麻薬を仕入れて売って…。それに、君も麻薬中毒だって聞いたけど」
「…」
「もし本当なら、俺は君を生かしておく訳にはいかないんだ」
ターゲットに、自分が殺される理由を淡々と説明してあげるのも、やはり初めてのことだった。
これまでそんなことしたことなかった。
ターゲットを見つけるなり、問答無用で殺していた。
それが当然だと思っていた…。
すると。
「ち、違います…!私は、麻薬中毒なんかじゃありません…!」
髪を振り乱して、怯えながら、彼女は否定した。
「ほんとに?」
「昔…生活に困って、何度か…人に誘われて、麻薬を…売ったことは、あります…」
そう。
「でも…それはもう、何年も前の話です!今はやってません!今は、今は…娘の為に真っ当に働こうって、そう決めたんです!」
「…」
「本当です。神に誓って、その手の仕事はしていません…!」
麻薬中毒者の「これからは真っ当に」とか、「神に誓って」などという言葉は。
「一生に一度のお願い!」くらい、信用出来ない。
ということを、俺は経験で知っている。
だけど…それでも、この人の言ってることは本当だろう、と思った。
そういう薬に溺れている人は大体、顔を見れば分かる。
頬がげっそり痩けていたり、それでいて目だけはギラギラしていたり。
挙動や言動がおかしかったり、呂律が回っていなかったり…。
そういう、薬物中毒者にありがちな特徴が、この人にはまったくなかった。
本人が認めた以上、かつて、薬の売買に手を染めていたのは本当なのだろう。
だけど、それは過去の話。今は違う。
信用出来るのか、って?
あのねー。俺はナジュせんせーみたいに、人の心の中は読めないけどさ。
長いこと、暗殺者なんてやってると…こういう時、相手が本当のことを言ってるのか。
それとも、命乞いの為に苦し紛れで嘘ついてるだけなのか、見れば分かるんだよね。
この人は、前者だ。
かつては、違法なお薬の売買に手を染めたことがある。
だけど…今はやってない。
つまり、『アメノミコト』の脅威にはならないってことだ。
こんな下らないミスをするのも、やはり初めてだった。
「ひっ…!?」
暗闇の中に、俺の姿を見つけたのだろう。
ターゲットはびっくりして、慌てて逃げ出す…。
…のではなく。
彼女はまず真っ先に、傍らで眠っていた娘を抱き締めた。
庇うように。守ろうとするように。
せめて娘だけは、と。
俺にとっては予想外の行動で、俺の方が面食らってしまった。
「やめて…。この子には何もしないで…!」
…なんで?
自分の身は守らなくて良いの?なんで、まず真っ先に自分の子を…。
その時、俺は気づいた。
この人にとっては、自分の命より娘の命の方が大事なんだ。
咄嗟に抱き締めて守ろうとしたのが、その何よりの証拠。
…分かるよ。
俺にもあるから。…自分の命より大切な命が。
やだよね。奪われたら。
「…ねぇ、君」
「やめて…!来ないで…!」
俺、一歩も動いてないよ。
「君、薬を売買してたってほんと?」
「えっ?」
今度は、ターゲットがびっくりする番だった。
「外国から勝手に麻薬を仕入れて売って…。それに、君も麻薬中毒だって聞いたけど」
「…」
「もし本当なら、俺は君を生かしておく訳にはいかないんだ」
ターゲットに、自分が殺される理由を淡々と説明してあげるのも、やはり初めてのことだった。
これまでそんなことしたことなかった。
ターゲットを見つけるなり、問答無用で殺していた。
それが当然だと思っていた…。
すると。
「ち、違います…!私は、麻薬中毒なんかじゃありません…!」
髪を振り乱して、怯えながら、彼女は否定した。
「ほんとに?」
「昔…生活に困って、何度か…人に誘われて、麻薬を…売ったことは、あります…」
そう。
「でも…それはもう、何年も前の話です!今はやってません!今は、今は…娘の為に真っ当に働こうって、そう決めたんです!」
「…」
「本当です。神に誓って、その手の仕事はしていません…!」
麻薬中毒者の「これからは真っ当に」とか、「神に誓って」などという言葉は。
「一生に一度のお願い!」くらい、信用出来ない。
ということを、俺は経験で知っている。
だけど…それでも、この人の言ってることは本当だろう、と思った。
そういう薬に溺れている人は大体、顔を見れば分かる。
頬がげっそり痩けていたり、それでいて目だけはギラギラしていたり。
挙動や言動がおかしかったり、呂律が回っていなかったり…。
そういう、薬物中毒者にありがちな特徴が、この人にはまったくなかった。
本人が認めた以上、かつて、薬の売買に手を染めていたのは本当なのだろう。
だけど、それは過去の話。今は違う。
信用出来るのか、って?
あのねー。俺はナジュせんせーみたいに、人の心の中は読めないけどさ。
長いこと、暗殺者なんてやってると…こういう時、相手が本当のことを言ってるのか。
それとも、命乞いの為に苦し紛れで嘘ついてるだけなのか、見れば分かるんだよね。
この人は、前者だ。
かつては、違法なお薬の売買に手を染めたことがある。
だけど…今はやってない。
つまり、『アメノミコト』の脅威にはならないってことだ。


