…ここに、ターゲットが。
連絡係に渡された紙切れによると、ターゲットが住んでいるのはここの2階の角部屋、だったっけ。
2階だろうが1階だろうが、俺にとっては障害にはならない。
俺は片手から糸を伸ばし、2階のベランダの柵を掴み。
ひょいっ、と身体を持ち上げて、ターゲットの部屋のベランダに辿り着いた。
窓にはカーテンがかかっているので、部屋の中からこちらが見えてしまう心配はない。
そーっと、窓から部屋の中の様子を探る。
…人の気配がする。
ってことは、ターゲットは在宅中なのか…。
もし、今夜ターゲットが留守だったら…俺は、このまま手を下さずに帰ることが出来たのに。
…。
俺は、窓にそっと手をかけた。
当然、窓には鍵がかかっている。
でも、問題はない。
蜘蛛の糸より細い俺の糸が、閉めた窓のほんの僅かな隙間をかい潜って、室内に入った。
あとは簡単。糸をくっと引っ張って、窓の鍵を開ける。
あっという間に、物音一つ立てることなく窓が空いた。
つくづく暗殺に特化している自分の魔法に、吐き気がする。
これまで、こんな気持ちになったことはなかったのに…。
俺は、そっと窓から室内に入った。
部屋の中は真っ暗だった。物音一つしない。
…どうやら、ターゲットは就寝中のようだ。
家具の少ない居間を、ぐるりと見渡し。
それから…薄っぺらくて、ツギハギの目立つ襖(ふすま)を見つめた。
襖の下の方に、クレヨンで、下手くそな絵が描いてある。
どう見ても、子供の絵だった。
俺は音を立てないように、細心の注意を払いつつ。
その落書きだらけの古ぼけた襖を、すーっと開けてみた。
すると。
親子が、一つの布団で眠っていた。
片方が、ターゲットである女性。
その傍らに、まだ3〜4歳くらいの、あどけない顔をした少女が眠っていた。
…これには、少し驚いた。
そう。ターゲットは子持ちだったのだ。
さっきの襖の落書きは、そこの子供が描いたものなのだろう。
ターゲットの枕元には、寝る前に子供に読んでやったであろう絵本が数冊、重ねて置きっぱなしだった。
小さな娘は、古ぼけたウサギのぬいぐるみを抱いて眠っていた。
二人共熟睡しているようで、すーすーと間抜けな寝息を立てていた。
こちらに気づく様子は一切なかった。
何故だか分からない。
何故だか分からないけど。
俺には、少女のあどけない…無邪気な寝顔と。
そして…学院に残してきた、ツキナの顔が重なって見えた。
…あの子も、無邪気な子だったからなぁ。
無邪気過ぎて…ちょっと心配になるくらい。
俺はこれから、この小さな女の子の母親を殺さなければならないのだ。
思わず、俺はその場に立ち竦んでしまった。
眠っている今のうちに、仕事を済ませるべき。
それは分かっていた。
だけど、どうしても…身体が動けなかったのだ。
殺すことを、躊躇ってしまった。
こんなことは初めてだった。
そして、それが仇となった。
「…。…?誰…?」
いつの間にか、母親の寝息が止まり。
かすかな声をあげて、布団の中からこちらを見つめていた。
連絡係に渡された紙切れによると、ターゲットが住んでいるのはここの2階の角部屋、だったっけ。
2階だろうが1階だろうが、俺にとっては障害にはならない。
俺は片手から糸を伸ばし、2階のベランダの柵を掴み。
ひょいっ、と身体を持ち上げて、ターゲットの部屋のベランダに辿り着いた。
窓にはカーテンがかかっているので、部屋の中からこちらが見えてしまう心配はない。
そーっと、窓から部屋の中の様子を探る。
…人の気配がする。
ってことは、ターゲットは在宅中なのか…。
もし、今夜ターゲットが留守だったら…俺は、このまま手を下さずに帰ることが出来たのに。
…。
俺は、窓にそっと手をかけた。
当然、窓には鍵がかかっている。
でも、問題はない。
蜘蛛の糸より細い俺の糸が、閉めた窓のほんの僅かな隙間をかい潜って、室内に入った。
あとは簡単。糸をくっと引っ張って、窓の鍵を開ける。
あっという間に、物音一つ立てることなく窓が空いた。
つくづく暗殺に特化している自分の魔法に、吐き気がする。
これまで、こんな気持ちになったことはなかったのに…。
俺は、そっと窓から室内に入った。
部屋の中は真っ暗だった。物音一つしない。
…どうやら、ターゲットは就寝中のようだ。
家具の少ない居間を、ぐるりと見渡し。
それから…薄っぺらくて、ツギハギの目立つ襖(ふすま)を見つめた。
襖の下の方に、クレヨンで、下手くそな絵が描いてある。
どう見ても、子供の絵だった。
俺は音を立てないように、細心の注意を払いつつ。
その落書きだらけの古ぼけた襖を、すーっと開けてみた。
すると。
親子が、一つの布団で眠っていた。
片方が、ターゲットである女性。
その傍らに、まだ3〜4歳くらいの、あどけない顔をした少女が眠っていた。
…これには、少し驚いた。
そう。ターゲットは子持ちだったのだ。
さっきの襖の落書きは、そこの子供が描いたものなのだろう。
ターゲットの枕元には、寝る前に子供に読んでやったであろう絵本が数冊、重ねて置きっぱなしだった。
小さな娘は、古ぼけたウサギのぬいぐるみを抱いて眠っていた。
二人共熟睡しているようで、すーすーと間抜けな寝息を立てていた。
こちらに気づく様子は一切なかった。
何故だか分からない。
何故だか分からないけど。
俺には、少女のあどけない…無邪気な寝顔と。
そして…学院に残してきた、ツキナの顔が重なって見えた。
…あの子も、無邪気な子だったからなぁ。
無邪気過ぎて…ちょっと心配になるくらい。
俺はこれから、この小さな女の子の母親を殺さなければならないのだ。
思わず、俺はその場に立ち竦んでしまった。
眠っている今のうちに、仕事を済ませるべき。
それは分かっていた。
だけど、どうしても…身体が動けなかったのだ。
殺すことを、躊躇ってしまった。
こんなことは初めてだった。
そして、それが仇となった。
「…。…?誰…?」
いつの間にか、母親の寝息が止まり。
かすかな声をあげて、布団の中からこちらを見つめていた。


