最高に嫌な気分で、鬼頭の部屋を出て。
それから二日ほど、俺は『アメノミコト』本部の一室で待機していた。
命令があるまでここで待機しろと、そう指示されたのだ。
そこは、俺が以前…『アメノミコト』にいた頃に使っていた部屋だった。
いつか、俺が戻ってくるのを待っていたかのように。
俺の昔の私物が、部屋の中にそのまま残されていた。
懐かしいなんて思わない。
むしろ、こういうところが酷く嫌味っぽくて、気に入らなかった。
そして俺はこの二日間、何もやることがなくて。
ずっと、ルーデュニア聖王国に置いてきた人のことばかり考えていた。
『八千代』のことであり、ツキナのことであり…。
学院長せんせーや羽久せんせーや、イレースせんせーや天音せんせーや、それにナジュせんせーや…マシュリのことも。
それに、学校の同級生のこととか…。
あとは…園芸部の畑のこと。
来年は一緒にイチゴを植えようって…ツキナと約束、してたんだけどなぁ…。
害虫退治用の農薬を、俺の毒魔法で自作して…。
それに、害獣に収穫物を食べられてしまわないように、一晩中『八千代』と一緒に畑を見守ろうって…。
そしてイチゴが収穫出来たら、まずはそのまま食べて、砂糖や練乳をかけて食べて。
それから大きなイチゴケーキを作って、みんなで食べようって…。
…そういう楽しいことを、たくさん考えてたんだけどな。
あっという間に、一瞬にして、それらの計画は塵となった。
現実の俺はと言うと、暗殺の仕事が舞い込んでくるまで、この陰気な部屋でぼーっと過ごしている。
人生って、ほんと分かんないもんだねー。
いやはや。波乱万丈な人生だよ。
まだ子供のはずなんだけど。既に色んなこと起き過ぎでしょ。
だけどね、俺は…心の中で何処か、ちょっと安心してるんだよ。
イーニシュフェルト魔導学院にいる間、ずっと。
「俺、こんなに幸せで良いんだろうか?」って、心の奥でずっと思ってた。
これまで散々人を殺した俺が…こんな風に幸せになって良いんだろうか、って。
俺はもっと…惨めで、苦しくて、悲惨な人生の方が似つかわしいんじゃないかって。
そうでないと、俺に殺された人達は納得しないだろうって…。
やっぱり、案の定そうだったね。
何もかも、過去にした悪行の全てをなかったことにして。
俺が人並みに幸せになろうなんて…。そんなことは決して許されない。
…きっと、幸せ過ぎてバチが当たったんだね。
そう思えば、今の状況にも納得が行く。
でも、良いよ。充分だよ。
もう既に…この身に許された幸福のすべてを享受した。
これからは、どんなに辛くても大丈夫。
自分にも幸福な時間があったんだって、その事実があるだけで。
これからどんなに辛いことが有っても、俺は乗り越えていける。
みんなと一緒に過ごした時間は、その事実は、決して嘘じゃない。なくなったりはしないのだから…。
…寂しいけれど、これが俺の運命なのだ。
むしろ、俺は他の暗殺者のみんなよりマシなんじゃない?
人生の中で、「幸せだった」と思える時間があったのだから。
幸福なことなど何も知らず、ただ機械的に人を殺し続けてきた、空虚な日々とは違う。
俺は、幸せがどういうものだったか知ってる。
それだけで、充分にこれからの人生を生きていける…。
だから、俺はもうだいじょーぶ。
きっとツキナもいつか、俺のことを忘れて。
彼女はあの平和なルーデュニア聖王国で、幸福な人生を謳歌するだろう…。
それが、今の俺の唯一の希望…。
…などと、考えていたその時。
「仕事だ。『八千歳』」
「…」
部屋の中に、黒子の衣装を纏った『アメノミコト』の連絡係がやって来た。
それから二日ほど、俺は『アメノミコト』本部の一室で待機していた。
命令があるまでここで待機しろと、そう指示されたのだ。
そこは、俺が以前…『アメノミコト』にいた頃に使っていた部屋だった。
いつか、俺が戻ってくるのを待っていたかのように。
俺の昔の私物が、部屋の中にそのまま残されていた。
懐かしいなんて思わない。
むしろ、こういうところが酷く嫌味っぽくて、気に入らなかった。
そして俺はこの二日間、何もやることがなくて。
ずっと、ルーデュニア聖王国に置いてきた人のことばかり考えていた。
『八千代』のことであり、ツキナのことであり…。
学院長せんせーや羽久せんせーや、イレースせんせーや天音せんせーや、それにナジュせんせーや…マシュリのことも。
それに、学校の同級生のこととか…。
あとは…園芸部の畑のこと。
来年は一緒にイチゴを植えようって…ツキナと約束、してたんだけどなぁ…。
害虫退治用の農薬を、俺の毒魔法で自作して…。
それに、害獣に収穫物を食べられてしまわないように、一晩中『八千代』と一緒に畑を見守ろうって…。
そしてイチゴが収穫出来たら、まずはそのまま食べて、砂糖や練乳をかけて食べて。
それから大きなイチゴケーキを作って、みんなで食べようって…。
…そういう楽しいことを、たくさん考えてたんだけどな。
あっという間に、一瞬にして、それらの計画は塵となった。
現実の俺はと言うと、暗殺の仕事が舞い込んでくるまで、この陰気な部屋でぼーっと過ごしている。
人生って、ほんと分かんないもんだねー。
いやはや。波乱万丈な人生だよ。
まだ子供のはずなんだけど。既に色んなこと起き過ぎでしょ。
だけどね、俺は…心の中で何処か、ちょっと安心してるんだよ。
イーニシュフェルト魔導学院にいる間、ずっと。
「俺、こんなに幸せで良いんだろうか?」って、心の奥でずっと思ってた。
これまで散々人を殺した俺が…こんな風に幸せになって良いんだろうか、って。
俺はもっと…惨めで、苦しくて、悲惨な人生の方が似つかわしいんじゃないかって。
そうでないと、俺に殺された人達は納得しないだろうって…。
やっぱり、案の定そうだったね。
何もかも、過去にした悪行の全てをなかったことにして。
俺が人並みに幸せになろうなんて…。そんなことは決して許されない。
…きっと、幸せ過ぎてバチが当たったんだね。
そう思えば、今の状況にも納得が行く。
でも、良いよ。充分だよ。
もう既に…この身に許された幸福のすべてを享受した。
これからは、どんなに辛くても大丈夫。
自分にも幸福な時間があったんだって、その事実があるだけで。
これからどんなに辛いことが有っても、俺は乗り越えていける。
みんなと一緒に過ごした時間は、その事実は、決して嘘じゃない。なくなったりはしないのだから…。
…寂しいけれど、これが俺の運命なのだ。
むしろ、俺は他の暗殺者のみんなよりマシなんじゃない?
人生の中で、「幸せだった」と思える時間があったのだから。
幸福なことなど何も知らず、ただ機械的に人を殺し続けてきた、空虚な日々とは違う。
俺は、幸せがどういうものだったか知ってる。
それだけで、充分にこれからの人生を生きていける…。
だから、俺はもうだいじょーぶ。
きっとツキナもいつか、俺のことを忘れて。
彼女はあの平和なルーデュニア聖王国で、幸福な人生を謳歌するだろう…。
それが、今の俺の唯一の希望…。
…などと、考えていたその時。
「仕事だ。『八千歳』」
「…」
部屋の中に、黒子の衣装を纏った『アメノミコト』の連絡係がやって来た。


