僕はこの人達を殺さない。そう決めた。
何でそう思ったのか…自分でも分からない。
だけど、この人達は悪い人じゃない。
何の罪もない人々だ。
そんな人を殺すことは、やってはいけないことだと思ったのだ。
そう決めた途端、自然と心の中のもやもやが晴れた。
そうだ。今、はっきり分かった。
僕は殺したくなかったのだ。
暗殺者なのに。これまで、たくさんの人の命を奪ってきたのに。
それでも今の僕は…『八千代』ではなく、黒月令月は…人を、殺したくなかった。
罪のない人を殺すことは、僕には出来なかった。
「た…助けてくれるのか…?」
「良いから。僕の言う通りにして。武器の密輸をやめて…」
「あ、ありがとう。ありがとう。ありがとう!」
息子は泣きながら、必死に頭を下げ続けた。
何度も僕に、お礼を言って。
…何で「ありがとう」なんだ。
僕は今さっきまで、君達親子を殺そうとしていたのに…。
「分かった。武器の密輸なんてもうやめる。絶対にやめる…!約束する」
「そう」
「ありがとう。助けてくれて、本当にありが、」
と、泣きながら息子が言った瞬間。
…彼の首が、すっぱりと切れ。
首から上が、ことん、と床に転がり落ちた。
まっすぐにスライスされた傷の断面から、ぷつぷつと血の雫が浮き。
そして、壊れた噴水のように、血飛沫を噴き出した。
床に転がった彼の顔は、驚いたまま固まっていた。
恐らく、自分が殺されたことに気づいていないのだろう。
何が起きたか分からないまま、一瞬にして命を失った。
…。
…え。
「…遅れてすみません、先輩」
暗闇の中から、別の声がして。
「っ!まっ…!」
僕の咄嗟の制止も聞かず。
布団の上で息子の首が落ちるのを、呆然と見つめていた母親の首が。
こちらも、すっぱりと切られて、床に転がった。
止めることも出来なかった。
見逃すと決めた二人の親子の命が、あっという間に、無情に奪われた。
…どう、して。
「これで任務完了ですね、先輩」
黒装束に、黒いフードを被った青年。
僕を『アメノミコト』に連れ戻した、あの暗殺者だ。
「どうして…ここに、君が…!」
「鬼頭様に言われたんです。僕も先輩の任務を手助けするようにと」
「…」
「急いで追いかけたつもりだったんですが…。さすが先輩、手が早いですね。もうターゲットを追い詰めていたとは」
彼は、にっこりと微笑んだ。
フードに隠れて僕には見えなかったけれど、少なくともフードの下では、笑っていたはずだ。
「さぁ、任務も無事に終わったことだし。帰りましょう」
「…君は…!」
「はい?」
僕は、思わず彼の胸ぐらを掴み上げた。
「なんてことを…!」
「どうしたんですか?先輩らしくもない…」
その『先輩』って呼ぶのをやめてくれ。
君は、僕の後輩なんかじゃない。
「…あぁ、僕が美味しいところを取っちゃったから、それで怒ってるんですか?」
「そんな訳…!」
「…まさか先輩、ターゲットに同情してた訳じゃありませんよね?」
「…」
図星を突かれて、僕は一瞬動けなくなった。
その瞬間に、彼は胸ぐらを掴む僕の手首を、ぐっと乱暴に握り返してきた。
何でそう思ったのか…自分でも分からない。
だけど、この人達は悪い人じゃない。
何の罪もない人々だ。
そんな人を殺すことは、やってはいけないことだと思ったのだ。
そう決めた途端、自然と心の中のもやもやが晴れた。
そうだ。今、はっきり分かった。
僕は殺したくなかったのだ。
暗殺者なのに。これまで、たくさんの人の命を奪ってきたのに。
それでも今の僕は…『八千代』ではなく、黒月令月は…人を、殺したくなかった。
罪のない人を殺すことは、僕には出来なかった。
「た…助けてくれるのか…?」
「良いから。僕の言う通りにして。武器の密輸をやめて…」
「あ、ありがとう。ありがとう。ありがとう!」
息子は泣きながら、必死に頭を下げ続けた。
何度も僕に、お礼を言って。
…何で「ありがとう」なんだ。
僕は今さっきまで、君達親子を殺そうとしていたのに…。
「分かった。武器の密輸なんてもうやめる。絶対にやめる…!約束する」
「そう」
「ありがとう。助けてくれて、本当にありが、」
と、泣きながら息子が言った瞬間。
…彼の首が、すっぱりと切れ。
首から上が、ことん、と床に転がり落ちた。
まっすぐにスライスされた傷の断面から、ぷつぷつと血の雫が浮き。
そして、壊れた噴水のように、血飛沫を噴き出した。
床に転がった彼の顔は、驚いたまま固まっていた。
恐らく、自分が殺されたことに気づいていないのだろう。
何が起きたか分からないまま、一瞬にして命を失った。
…。
…え。
「…遅れてすみません、先輩」
暗闇の中から、別の声がして。
「っ!まっ…!」
僕の咄嗟の制止も聞かず。
布団の上で息子の首が落ちるのを、呆然と見つめていた母親の首が。
こちらも、すっぱりと切られて、床に転がった。
止めることも出来なかった。
見逃すと決めた二人の親子の命が、あっという間に、無情に奪われた。
…どう、して。
「これで任務完了ですね、先輩」
黒装束に、黒いフードを被った青年。
僕を『アメノミコト』に連れ戻した、あの暗殺者だ。
「どうして…ここに、君が…!」
「鬼頭様に言われたんです。僕も先輩の任務を手助けするようにと」
「…」
「急いで追いかけたつもりだったんですが…。さすが先輩、手が早いですね。もうターゲットを追い詰めていたとは」
彼は、にっこりと微笑んだ。
フードに隠れて僕には見えなかったけれど、少なくともフードの下では、笑っていたはずだ。
「さぁ、任務も無事に終わったことだし。帰りましょう」
「…君は…!」
「はい?」
僕は、思わず彼の胸ぐらを掴み上げた。
「なんてことを…!」
「どうしたんですか?先輩らしくもない…」
その『先輩』って呼ぶのをやめてくれ。
君は、僕の後輩なんかじゃない。
「…あぁ、僕が美味しいところを取っちゃったから、それで怒ってるんですか?」
「そんな訳…!」
「…まさか先輩、ターゲットに同情してた訳じゃありませんよね?」
「…」
図星を突かれて、僕は一瞬動けなくなった。
その瞬間に、彼は胸ぐらを掴む僕の手首を、ぐっと乱暴に握り返してきた。


