神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

僕は、いつもの仕事着に袖を通した。

慣れ親しんだ黒装束である。

『アメノミコト』の暗殺者にとって、制服とも言えるこの服。

イーニシュフェルト魔導学院にいた時も、夜になればこの服を着て、校内を巡回したり。

他にも…戦わなきゃいけない時は、こうしてこの黒装束を着ていた。

…それなのに。

今、こうしてこの服を着ることに…何故、こんなにも胸のざわつきを感じるのか。

僕はいつも通り、小太刀と小刀と…その他、いつも携帯している暗殺に必要な道具を揃え。

それらを携えて、早速任務の現場に向かった。

何もかもがいつも通りだった。

何も特筆すべきことはない。『アメノミコト』の暗殺者として、普段、当たり前のようにやっていること…。

…それなのに。

僕の気分は晴れないままだった。

久し振りの任務だから、緊張しているのだろうか?

…いや、緊張は…まったくしていない、と思う。

暗殺者になって初めての任務の時でさえ、緊張なんてしなかった。

緊張っていうのは、「上手くやろう」という意思があるからこそ起きるものだ。

どうでも良いと思っているなら、誰だって緊張したりしない。

僕はこの仕事を、「上手くやろう」なんて欠片も思っていなかった。

かと言って、「失敗したい」とも思っていない。

…どうでも良い。

そう。どうでも良いとしか思っていなかった。

こんな中途半端な気持ちで殺される、ターゲットが哀れだった。

僕は任務地に着くまでには、気持ちが少しは落ち着くことを願うしかなかった。






…しかし。