神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

天音から、今日起きたことの説明を受けた俺達は…。

「…そうか…」

令月とすぐりに続いて…ナジュまでも。

「ごめんなさい…。僕が…僕が、無力だったばかりに…!」

天音は悔しそうに、心の底から悔いているかのように。

涙を滲ませ、自分の拳を痛いほど強く握り締めていた。

天音が今、どれほど辛い思いをしていることか。

目の前で親友を連れ去られた。しかも、自分を守る為に…。

俺だって…これがシルナだったらと思うと、胸が張り裂けそうになる。

「天音…。お前のせいじゃない」

「でもっ…。僕…何も出来なかった…!」

そうだな。そう思う気持ちは分かる。

だけど、これだけは言える。

「少なくともナジュは、お前のせいだなんて欠片も思ってないはずだぞ」

「…」

天音はハッとして、それから黙って俯いた。

俺に分かるくらいなのだから、ナジュの親友である天音にだって、当然分かっているだろう。

ナジュは決して、天音のせいで自分が連れ去られたなんて思っちゃいない。

むしろ、天音を助けられてよかったと思ってるはずだ。

そういう奴だ。…無駄に律儀で、仲間思いな奴なんだから。

そして。

「今あなたがすべきことは、後悔して泣くことではありません」

イレースが、相変わらずの鋭い口調で。

だけど、イレースなりの励ましの言葉を天音に伝えた。

「起きてしまったことはどうしようもないのだから、これからどう挽回するかを考えなさい」

「…イレースさん…」

「自分の責任だと思ってるなら、責任を持って三人を連れ戻しなさい。あなたがすべきことはそれだけです」

「…うん。…そうだね」

言葉は厳しいが、イレースの言う通りだ。

今は、失ったものを悔いて、悲しむ時じゃない。

だって、まだ失っていないんだから。

連れ戻せば良いだけだ。三人共。

助けなきゃいけないのが、二人から、三人に増えただけだ。そう思おう。

二人だろうが三人だろうが、助ける。

「…まさか、元暗殺者二人と…ナジュまで、『アメノミコト』に連れて行かれるとはな」

と、ジュリスが言った。

ジュリスはついさっき、天音に説明を聞くまで。

令月とすぐりが『アメノミコト』に連れて行かれたことを知らなかった。

「やっぱりアレか?裏切り者を粛清する…とか、そういう名目で連れて行かれたのか」

「…恐らくは」

「ちっ。…もう見逃してやれば良いものを。しつこい奴らだ」

まったくだよ。

それに、令月とすぐりのみならず…ナジュまで。

「でも、裏切り者の粛清が目的なら…何で、ナジュまで連れて行ったんだ?」

「…それは…」

「あいつは関係ないだろ」

うん。俺もそう思う。

ナジュが『アメノミコト』に連れ去られる理由が分からない。

何でだ?何でナジュまで…。

それに、天音のことは無視して、ナジュだけを連れて行った。

何かは分からないけど、ナジュでなきゃいけない理由があったんだろう。

『アメノミコト』がイーニシュフェルト魔導学院に襲撃してきた時、ナジュに辛酸を舐めさせられたからか?

その腹いせ?復讐の為?

「…多分…だけど、ナジュ君の…読心魔法を利用する為、だと思う」

天音が、ポツリとそう言った。

ナジュの読心魔法を…利用する為、だと?