ーーーーー…俺は、珍しくとてもイライラしていた。

何故かと言うと。

「…しゅーん…」

「…」

このベリクリーデのせいである。

いや、ベリクリーデのせいじゃない。

ベリクリーデをこんなにしょんぼりとさせている、あのクソ天使に腹が立つのだ。

…何処で何をやってんだ。あいつは。

「ベリクリーデ…」

「…」

…見ていられない落ち込みっぷり。

何を考えてんだ。あの天使。

ベリクリーデにこんな顔させて、何考えてんだ。

本当に、突然いなくなったのだ。

ついこの間まで、ベリクリーデが呼べば。

いや呼ばなくても、鬱陶しいくらい何処にでも現れていたのに。

ストーカーかよ、って思わずツッコミ入れるくらいに。

しつこく、ベリクリーデに付き纏っていた。

しかし、今は…。

ベリクリーデがいくら、いつものように「クロッティー」と呼んでも。

「お願いだから出てきて」と頼んでも。

まったく聞こえていないかのように、クロティルダは姿を見せなかった。

そのせいでベリクリーデは、酷く落ち込んでしまったのだ。

「…もしかして私、クロティルダに嫌われちゃったのかな?」

ほら。こんなことを言い出す始末。

どうしてくれんの?マジで。

「そんなことないって…!絶対そんなことないって」

慰める俺の身にもなってくれよ。

「そうかな…」

「大丈夫だよ…。心配しなくても」

愛想尽かすなら、もっと早くそうなってるはずだ。

俺は天使の事情なんて知ったことじゃないが。

多分、何らかの理由があって、ベリクリーデのもとに来られないのだろう。

決して、ベリクリーデが嫌われてしまったからではない。

…と、俺は思っている。

大体、何も言わずに去るっていうのが腹立たしい。

事情があるなら、それはそれで仕方ない。

でも、消える前に、そう言ってから消えろよ。

「しばらく天界に戻ってるから」とか。「ちょっと事情があって」とか。

それくらい言ってくれれば、こっちも心配せずに済んだものを…。

…って、違うぞ。俺は別に、奴の心配なんてしてない。

天使がどうなろうと勝手だが、そのせいで落ち込んでるベリクリーデのことを心配しているのだ。

そこは勘違いしないでくれよ。頼むから。