俺とシルナが、それぞれ願い事を書いて、笹に吊るしていると。

「あれ。何だか面白そうなことやってますね」

「それ、七夕の短冊?」

…お。

教師仲間のナジュと、それから天音がやって来た。

「二人共、良いところに!」

「ひぇっ。な、何ですか?」

シルナは二人を見て、獲物を見つけたと言わんばかり。

おいやめろ。天音がビビってるじゃないか。

「折角の七夕だからね!みんなで願い事を書こうと思って。さぁ、ナジュ君。天音君も書いて書いて」

二人にそれぞれ、短冊とボールペンを押し付ける。

だけではなく。

「あっ、ついでにチョコももらっていってね」

二人にそれぞれ、チョコレートまで押し付ける。

押し売りじゃねぇんだから。

「ふむ、願い事ですか…。何でもアリなんですか?」

「勿論。織姫様と彦星様が、お願い事を叶えてくれるよ!」

シルナ、ドヤ顔。

色々と何か間違っているような気がするが、俺はもう何も言わない。

「織姫と彦星か…。確か、駆け落ち失敗して天罰食らって、年に一回しか会えない刑に処されたんでしたっけ?」

「え、えぇと…。そうじゃなくて、二人が結婚した後怠け者になっちゃったから…」

「そうですか。とはいえ、年に一回会えるんなら充分幸せじゃないですか。二度と会えない訳でもないのに」

「…それは…」

…ナジュ。

お前がそれを言うと、言葉の重みが桁違いだな。

「そういう訳なんで、僕の願い事は…『今年こそ死にたい!』とかで良いですかね?」

「…それはやめようよ…」

「そうですか。じゃあ何にしようかなー」

短冊の中に、「今年こそ死にたい!」なんて願い事が混ざっているのを見たらぎょっとするからな。

気持ちは分かるけど、見ていると悲惨な気持ちになるからやめてくれ。

「天音さんはなんて書くんですか?」

「え?そうだな…。…じゃあ、今年一年、みんなが怪我なく病気なく、元気に過ごせますように、って…」

「なんか年賀状みたいですね」

やめろって。




…何のかんの言いつつも、ナジュと天音が参加してくれたお陰で、早くも笹には四枚の短冊が。

これを見て、他の生徒達も参加してくれると良いのだが…。